内科医の3Dナカノです。今日はUSPSTFから2022年9月に推奨が出た、梅毒感染のリスクが高ければ梅毒の検査をしましょうというお話です
USPSTFについては、こちらをご覧ください
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本日の結論:
梅毒感染のリスクが高ければ梅毒の検査をしましょう
リスクとは:男性と性交渉する男性(MSM)・HIVや他の性行為関連感染症(STI)の罹患・薬物乱用者・逮捕歴・性産業・軍隊への従事など
まずは日本とアメリカでの10万人あたりの梅毒感染症の頻度を見てみましょう
梅毒 | クラミジア | 淋菌 | |
日本 | 5.6 (2018年) | 20 (2018年) | 6.5 (2018年) |
米国 | 35.2 (2018年) | 550 (2019年) | 200 (2020年) |
人口あたりの感染者数は他の性感染症より日米での乖離が少ないという傾向がみてとれます
結論のもとになったUSPSTF推奨:
感染のリスクが高い人に、梅毒のスクリーニングをする(推奨度A)
USPSTF
言葉の解説をします
梅毒とは、
トレポネーマパリダム(Treponema pallidum)という細菌によって起きる病気で、
感染早期(数ヶ月以内)には:粘膜(性器に多い)や皮膚の症状を主に、
晩期(感染1~30年)には:神経・眼や大動脈の異常がみられるもの、
などが主な症状です
晩期梅毒は診断が難しいので、症例報告や症例発表などに登場しやすい病気です。梅毒の画像は若干ショッキングなので掲載しません
梅毒の感染経路は、
性器にある病気が性交渉で伝播するのが通常で、
胎盤を通じた新生児への感染や、
キスなどによる粘膜への感染や、
まれには皮膚から皮膚に感染する場合(2期梅毒・バラ疹)
などがあります
梅毒感染のリスクとは、
- 男性と性交渉する男性(MSM)
- HIVや他の性行為関連感染症(STI)の罹患
- 薬物乱用者
- 逮捕歴
- 性産業・軍隊への従事
などが挙げられています
スクリーニング検査は、
- カルジオリピン抗原:STS, RPR
- T. pallidum抗原:TPHA, TPPA, FTA-ABSなど
の2種類が大きく分けるとあります
カルジオリピンは梅毒の細菌の表面に存在している脂質成分で、感染後比較的早期に抗体が出来やすいことが知られます。一方で様々な膠原病・感染症・妊娠などでも検出される可能性(いわゆる偽陽性)があり、特異的ではない検査です。T. pallidum(梅毒)の菌体に対する抗体はもう少し後に出来るのですが、菌に特異的なので(他の菌と若干交差反応はあるものの)比較的偽陽性は少ない検査方法です。
以下でご覧いただけるように解釈は難解なので医師におまかせするのがいいと思います
の2種類が大きく分けるとあって、解釈は以下の通り難解なので医師におまかせするのがいいと思います
カルジオリピン | T. pallidum | 解釈 |
(-) 陰性 | (-) 陰性 | 非梅毒・梅毒感染初期 |
(+) 陽性 | (-) 陰性 | 梅毒初期・全身性エリテマトーデス・関節リウマチ・ 伝染性単核球症・妊娠・肝疾患・抗リン脂質抗体症候群 |
(-) 陰性 | (+) 陽性 | 梅毒治癒後の抗体保持者・マラリア・レプトスピラ・歯周病菌 |
(+) 陽性 | (+) 陽性 | 梅毒感染 |
スクリーニングはどのくらいおきに?
リスクが高い状態が維持されていれば、3-6か月毎に推奨されています
梅毒の治療は、
未だに最も原始的なペニシリンという抗菌薬が有効です。確実に治るので主治医の先生と相談してしっかり治療してください
まとめ:
さて、感染のリスクがある人で梅毒の検査を検討しましょうという話でした。梅毒は診断がやや複雑なものの、診断さえついてしまえば治療は比較的簡単です。梅毒による潰瘍(口内炎のようなクレーター状病変)があるとHIV感染効率がない場合の4倍になるという報告もあります。診断の煩雑な部分は主治医の先生にお願いしてさっさと治してしまい、感染予防に努めてください。コンテンツを健康長寿にお役立てください!
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