肥満には減量カウンセリング [USPSTF2018]

肥満

内科医の3Dナカノです。今日はUSPSTFから2018年9月に推奨が出た、太りすぎている場合には減量のためのカウンセリングを受けましょうというお話です

USPSTFについてはこちらをご覧ください

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目次

本日の結論:

BMIが30以上の場合は、肥満症が得意な医療機関の受診をオススメします
減量手術が保険適応になったので、最後の手段にご検討ください

また日米で比較してみますが、

男性女性
日本4.4% (2015)3.1% (2015)
米国41% (2014)36% (2014)
日本とアメリカのBMI 30以上の人の割合

ということで役に立つ人の割合は日本ではグッと少なくなっていますが、全くいないわけではないので取り上げたいと思います
結論のもとになったUSPSTF推奨:

BMIが30以上の成人で、

集学的な行動療法を提供する

USPSTF

言葉の解説をします

BMIとは、

以前に以下の記事で取り上げていますのでご覧になってください

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BMI30とは、

身長 (cm)145150155160165170175180185
体重 (kg)6368727782879297103
BMIが30になる身長と体重の対応表 (小数点以下四捨五入)

よりも多いことをさします

肥満症の問題点は、

生活習慣病(血糖・脂質・血管の病気)の悪化が見込まれる
尿もれ・睡眠時無呼吸症候群・抑うつ・生活の質・体の動きに制限など
に伴う死亡率の上昇が挙げられます

集中的・集学的な行動療法とは、

  • 食事と運動習慣を見直すことで
  • 5%以上の体重減量を目指すものです

アメリカでは期間は1~2年間(月1回程度)で行われているようです
日本ですぐに利用できる制度が見当たりませんが、日本肥満学会(www.jasso.or.jp)の認定肥満症専門病院では、多職種による専門的なケアが期待できると思います

減量手術は、

今回の推奨には入っていませんが、日本でも2016年から医療保険で手術による肥満治療が実施できるようになったので紹介させてください

  • 18~65歳で6ヶ月以上内科で治療しても、
  • BMIが35以上の患者で、合併症が1つ以上ある
  • BMIが32~34.9で、合併症が2つ以上ある場合に、
  • 腹腔鏡下スリーブ状胃切除術

ができるようになりました

この場合の合併症とは、

  • 糖尿病:HbA1cが8.0%以上
  • 高血圧:降圧薬6ヶ月使用で収縮期血圧が160mmHg以上
  • 脂質異常症:薬物治療6ヶ月使用でLDL 140mg/dLまたはnon-HDL 170mg/dL以上
  • 閉塞性睡眠時無呼吸症候群:AHI 30以上

と条件が定められています

睡眠時無呼吸症候群とは、

眠っている間に息が止まってしまう病気で、1泊入院ポリソムノグラフィーという検査や、自宅で機械を持ち帰ってご自身で測定していただく方法で診断されます。AHI・apnea-hypopnea index(無呼吸・低呼吸指数)は1時間に何回無呼吸と低呼吸が観測されたかという数字です。AHI 5以上で睡眠時無呼吸症候群と診断されます。AHI 30以上というのは2分に1回以上呼吸が妨げられている状態です

腹腔鏡下スリーブ状胃切除術とは、

  • 胃の容積を小さくする手術です
  • 食欲減退や血糖低下に、よい影響があることが分かっています
  • 手術の傷は小さいもので済む場合が多いです

胃の大弯だいわん側(胃の膨らんでいる方)を切り取って、胃の容積を小さくする手術です。一見短絡的な手術のように思えるのですが、血糖に関連するホルモン(グレリンやGLP-1など)を介して食欲や血糖値にいい影響があるとされています。腹腔鏡下手術とは、お腹にトンネル状の穴を開けてロボットアームのような装置で実施する手術です。ナカノは内科なのでお手伝いしかしたことがないですが、傷が小さくて治りが早い反面、難易度が高い手術とされています。ナカノが初期研修をした病院では10年以上前からこの手術をしていました。患者さんの体型や生活習慣病の改善に目を見張ったのを鮮明に覚えています

スリーブ状胃切除術 (Manu5CC BY-SA 4.0)

肥満症でオススメしないことは、

  • 脂肪吸引
  • ダイエットサプリ
  • 鍼灸

です。現状では十分な有効性・安全性を検証したデータが得られていないためです

まとめ:

さて、太りすぎている場合には減量のためのカウンセリングをうけましょう、というお話でしたがいかがだったでしょうか。減量手術の話でだいぶ脱線しましたが、どうしても痩せられない方の最後の手段として有用なオプションだと思います。是非コンテンツを健康長寿にお役立てください!

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この記事を書いた人

卒後15〜20年の病院内科医のナカノです。資格は医師・総合内科専門医・リウマチ専門医・アレルギー専門医(内科)・博士(医学)です。現在はアメリカのワシントンDC郊外の研究所で研究者として働いてます。
暮らしに役立つ知恵や皆さんの健康に寄与する情報を発信していければと考えています。

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