内科医の3Dナカノです。今日はUSPSTFから2022年8月に推奨が出た、心血管疾患(CVD)の予防にスタチンというお薬を使いましょうというお話です。
USPSTFについてはこちらをご覧ください
本日の結論:
- 心血管疾患(CVD)は、心筋梗塞・狭心症・脳卒中・大動脈などの病気の総称です
- 40~75歳で心血管のリスク(脂質異常症・糖尿病・高血圧・喫煙)があったら
- スタチン(コレステロール治療薬)が心血管疾患の予防に有効な場合があります
- 健康診断の結果を参考に、平日の内科外来受診をオススメします
結論のもとになったUSPSTF推奨は次のとおりです
40~75歳の大人で、
心血管のリスク(脂質異常症・糖尿病・高血圧・喫煙)があるひとで、
10年間推定心血管リスクが10%以上なら、
スタチンを始めましょう(推奨度B)
USPSTF
言葉の解説をします
心血管疾患(CVD)とは、
主に動脈の老化(動脈硬化)にともなって起きる病気の一軍で、
冠動脈疾患 | 心筋梗塞・狭心症など心臓を養っている血管が狭い・詰まってしまう病気 |
脳卒中 | 脳梗塞・脳出血・一過性脳虚血発作(TIA)など脳の血管が詰まるか破れる病気 |
末梢動脈疾患(PAD) | 主に脚の血管が狭くて長い距離歩けない・足の色が悪くなってしまう病気 |
大動脈疾患 | 大動脈解離・大動脈瘤など一番太い血管(大動脈)が裂けたりこぶができたりする病気 |
などの病気を総称したものです。日本の50歳以上の死因でも2位になっているので他人事ではありません
イメージで言えば、しなやかな散水用のホースと、カチカチの塩ビ管の両方に水圧をかけたときを想像してください。散水用のホースは伸びるけれどカチカチの塩ビ管の方が伸びないので、負担がかかったり破断したりし易いということが思い浮かべられるのではないでしょうか
10年間推定心血管リスクとは、
10年以内に心血管疾患(CVD)を発症する確率が何%か予想する計算システムです。米国心臓病協会(AHA)と米国心臓病学会(ACC)が提唱しているASCVDが最新版です
年齢・性別・人種・総コレステロール・HDL(善玉コレステロール)・収縮期血圧(いわゆる上の血圧)・拡張期血圧(いわゆる下の血圧)・血圧の治療・糖尿病・喫煙のデータを入れると結果が出ます
ASVCDのリンク先にお手持ちの健康診断の結果を入れてみてください(意味不明だったら解説するのでコメント下さい!)
スタチンとは、
主にLDL(悪玉コレステロール)値を下げる働きのあるお薬(処方薬)で、以下のようなものが日本で使われています。成分名が○○スタチンなのでスタチン系と呼ばれていて、以下の名称で処方されています
- メバロチン® (プラバスタチン)
- リポバス® (シンバスタチン)
- ローコール® (フルバスタチン)
- クレストール® (ロスバスタチン)
- リバロ® (ピタバスタチン)
- リピトール® (アトルバスタチン)
- 合剤だとカデュエット®・アトーゼット®など
(カッコ内は有効成分名・後発(ジェネリック)医薬品名)
スタチンの主な副作用は、
横紋筋融解症といわれるもので、
- 筋肉が壊れて筋肉痛になる
- 壊れた筋肉の成分により尿の色が焦げ茶色になる
- 血液検査をしている場合は、主に筋肉の異常を示唆するCK(クレアチンキナーゼ)と、
- AST/ALT/LDHなど肝臓のダメージを示唆する検査値の異常高値
などの異常が出ます。腎臓や肝臓の働きに問題がある人はリスクが高く、特に注意が必要です。スタチンの副作用の全貌については別記事で取り上げていますのでご覧ください
最後にこの推奨の注意点ですが、
以下の場合は推奨の限りではなく、スタチンを使用するべきという点です
- 既に心血管疾患(CVD)の診断や症状が見られている場合
- LDL(いわゆる悪玉コレステロール)が190 mg/dL以上
- 家族性高コレステロール血症がある場合
まとめ:
今日は心血管疾患(CVD)とスタチンのお話をしました。心血管疾患は日本でも死因の上位にランクインしている病気です。ずっと元気である日ぽっくりは3Dナカノだけでなく、みんなの理想だと思います。でも実際には、脳卒中の後遺症で麻痺が残ったり、心筋梗塞の後遺症でペースメーカーを入れたりすると楽しい老後の生活が暗転してしまうかもしれません
健康診断を受けていない方は受けていただいて、是非コンテンツを健康長寿にお役立てください!
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