内科医の3Dナカノです。今日はUSPSTFから2021年9月に推奨が出た、リスクが高い女性はクラミジアと淋菌の検査を検討しましょうというお話です
USPSTFについては、こちらをご覧ください
当Blogの健康診断の推奨・まとめ記事は、こちらをご覧ください
本日の結論:
性行為関連感染症(STI)を知ろう!
STIのリスクが高い女性はクラミジアと淋菌の検査を考えてもいいかも?
まずは日本とアメリカでの10万人あたりのクラミジア・淋菌感染症の頻度を見てみましょう
クラミジア | 淋菌 | |
日本 | 20 (2018年) | 6.5 (2018年) |
米国 | 550 (2019年) | 200 (2020年) |
人口あたりの感染者数が桁1つ以上違うので別物と言っていいでしょう
というわけで今回の推奨は参考意見でいいと思います
もとになっているUSPSTFの推奨:
米国の妊婦を含む性的な活動がある女性で、
15~24歳、ないし25歳以上で性感染症のリスクがあるひとで、
クラミジアと淋菌の検査をしましょう(推奨度B)
USPSTF
言葉の解説をします
性行為関連感染症(STI)とは、
性的な活動にともなって伝播する感染症です
コンドームの有無はおろか口をつけるかどうか・皮膚が触れ合うことがどうかで感染したりすることがある病気です。原因によって考え方が違うので生物学的な場合分けをしましょう
細菌が原因:
今回のクラミジアと淋菌もこれに含まれます。日本で増加が報告されている梅毒もこれです
淋菌とクラミジア感染症を放置すると感染を広げてしまうリスクになるだけでなく、女性の右上腹部痛の原因や、妊娠や出産への影響があるためできるだけ早く診断して治療したい病気です
主に粘膜の接触で感染するのでコンドームの有無はおろか口をつけるかどうかの問題になります。梅毒は状況によっては病気の皮膚に触るだけで皮膚から感染します。
細菌の多くは抗菌薬で治療が可能なので、ここ100年くらいのスパンでみると劇的に治療成績が良くなった病気です
細菌の治療(抗菌薬)は一方で、
- 耐性菌の出現 (≒善玉菌の駆逐)
- 元の病気なのか抗菌薬の副作用なのかが分からなくなる (診断があいまいなケースに謎の抗菌薬)
ことが問題になっています
抗菌薬を規定の日数内服しないで治療が中途半端になると治らずにぶり返す時があります。副作用が疑わしい場合以外では、処方された抗菌薬は飲みきっていただくよういつもお願いしています
ウイルスが原因:
ヒト免疫不全ウイルス(HIV)・単純ヘルペスウイルス・ヒトT細胞白血病ウイルス(HTLV-1)・ヒトパピローマウイルス(HPV)などが知られています。感染経路は粘膜・皮膚・授乳・輸血など多岐にわたります
HIVはここ40年くらいの研究費の集中と医学の進歩により治療可能になった一群です。詳しくはHIV感染症の稿をご覧ください
一方で細菌とは違い抗ウイルス薬がまだ開発されていないウイルスが圧倒的に多いので、ワクチンやコンドームなどの予防策で感染を予防するしかないウイルスも多く存在します
その他が原因:
原虫が感染しておこる膣トリコモナス症・昆虫が感染しておこるケジラミなどが知られています。ケジラミは皮膚が触れ合うこと感染します
性行為関連感染症(STI)のリスクが高い状態とは、
- 過去・現在進行形でSTIにかかった
- 新規・ないし2人以上のセックスパートナー
- セックスパートナーが同時期に別のパートナー
- 性感染症に感染したセックスパートナー
- 1対1関係じゃないのにコンドームの不使用
- 性交渉をお金や薬物と交換している
- 監禁歴
と今回の推奨では定義されています
お察しのとおり、多少の信頼関係があってもなかなかどうして立ち入った内容なので、該当する場合には是非教えていただけると助かります
検査内容は
淋菌とクラミジアの検査は生殖器・のどなどからの検体を、核酸増幅検査(PCR)をかけます
お値段も保険でカバーされて検査自体は5000円以内(の3割負担など)で収まります
まとめ:
さて、今回の推奨はすぐに役立つものではなかったですが、性行為関連感染症(STI)について簡単に触れてみました。心あたりがある場合には早期発見早期治療していただいて、是非コンテンツを健康長寿にお役立てください!
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