糖尿病の検査―BMIが23以上で [USPSTF2021]

糖尿病

内科医の3Dナカノです。今日はUSPSTFから2021年8月に推奨が出た、BMIが23以上のひとは糖尿病のスクリーニング検査をしましょうというお話です

USPSTFについてはこちらを、また当Blogの健康診断推奨のまとめは、以下をご覧ください

目次

本日の結論

  • 日本人ではBMI 23以上で糖尿病のスクリーニング検査(血糖値・ヘモグロビンA1c)をしましょう

結論のもとになったUSPSTF推奨は次のとおりです

35~70歳の過体重・肥満のひとで、

前糖尿病ないし2型糖尿病の検査や、予防的介入を行う(推奨度B)

USPSTF

言葉の解説をします

BMI(Body mass index)とは、

体重(kg)÷身長(m)÷身長(m)
で求められる肥満指数です

過体重・肥満とは、

  • 過体重:BMI≧25
  • 肥満:BMI≧30

と定義されています

BMI 23に該当する体重は、

身長(cm)145150155160165170175180185
体重(kg)485255596366707579
BMIが23になる身長と体重早見表

となります。意外と制限がきつく思われませんか?

糖尿病とは、

過剰なカロリー・運動不足・遺伝などが原因で、血中の糖分(ブドウ糖)が制御できなくなる病気です。血液から体中の臓器にブドウ糖を取り込むのに必要なインスリンという物質が不足しているか、効きが悪いことが根本の病態です。血中にあり余ったブドウ糖(栄養分)が尿中に漏れ出てしまうために糖尿病という病名になっています

糖尿病のリスクが高い人種では、

より若い年齢でスクリーニングを開始することが推奨されています
 対象:アメリカ・アラスカ・ハワイ先住民・太平洋諸島・アフリカ系・ラテン系
アジア系ではBMI≧23をスクリーニング対象にするとの記載もあります

スクリーニング検査には、

  • 空腹時血糖値
  • ヘモグロビンA1c(HbA1c)値
  • ブドウ糖負荷試験(OGTT)

が指定されています

空腹時血糖値とは、

  • 最低8時間カロリーのあるものを摂取しないでおなかが空いているときに測定する血糖値
  • 126mg/dL以上:糖尿病疑い
  • 100-125mg/dL:糖尿病前段階

指先をチクリとする簡易血糖測定器での測定より正確であると考えられています

ヘモグロビンA1c(HbA1c)値とは、

  • ここ1~2ヶ月の平均の血糖を反映する検査値で、
  • 6.5%以上で糖尿病疑い

です
血液を赤くしている成分であるヘモグロビンには、体中に肺で受け取った酸素を運ぶ働きがあります。高血糖の状態が続くと、ヘモグロビンにブドウ糖が結合していきます。この現象を定量化したものがHbA1cで、6.5%以上だと糖尿病疑いです
HbA1cはここ1〜2ヶ月の平均の血糖の状況を反映すると考えられています。要するに病院の検査直前だけ暴飲暴食を避けても全てお見通しになってしまうということです
ただ、赤血球の寿命が変化する病気(貧血・鉄欠乏・ビタミンB12や葉酸欠乏・増血剤の使用など)では正確な値が出ないことが知られているので、我々も気をつけて解釈しています

ブドウ糖負荷試験(OGTT)とは、

  • 大量のブドウ糖接種後、2時間の血糖測定する検査で、
  • 200 mg/dL:糖尿病疑い
  • 140~199 mg/dL:糖尿病前段階

です
OGTTは75gのブドウ糖液(トレーラン®という激甘の薬)を内服前、(1時間後)、2時間後に採血して血糖値を測定するもので、140~199mg/dLが前糖尿病、200mg/dL以上で糖尿病疑いです。何回も採血するのと最低2時間は病院にいていただかないといけないので、誰彼構わずするような検査じゃありません

糖尿病疑い

「糖尿病疑い」というカテゴリーがあるのは、

必ずしもスクリーニングの3つの検査結果が一致しない場合があるためです。そのような場合には直ちに糖尿病の内服薬を開始するのではなく、食事や運動の習慣を見直しして数ヶ月後に再検査するのが一般的です

もともとの推奨では全部の検査が正常なら3年毎の検査を推奨していますが、日本では健康診断でももう少し頻繁に通常検査がされることになると思います

BMI≧30の場合の推奨は別記事で紹介しているので以下をご覧になって下さい

米国糖尿病学会のガイドラインもイケてるのでこれも順次ご紹介します

BMI 23以上で糖尿病を疑ってかかろう!

という趣旨の記事はいかがだったでしょうか。ご自身の身長(m)×身長(m)×23をすると自分のMAX健康体重がわかります。一度計算してみて、是非記事を健康長寿にお役立てください!

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この記事を書いた人

卒後15〜20年の病院内科医のナカノです。資格は医師・総合内科専門医・リウマチ専門医・アレルギー専門医(内科)・博士(医学)です。現在はアメリカのワシントンDC郊外の研究所で研究者として働いてます。
暮らしに役立つ知恵や皆さんの健康に寄与する情報を発信していければと考えています。

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