プロトンポンプ阻害薬の長期内服はオススメしません [内科雑記]

PPIに御用心
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本日の結論:

プロトンポンプ阻害薬(PPI)は胃腸の出血時や、集中治療のときには重要なお薬です
長期間使い続けると、大腸炎・骨粗鬆症・貧血などの副作用が出る可能性があります
長期間内服されている場合には、一度主治医の先生にご相談して休薬もご検討ください


言葉の解説をします

プロトンポンプ阻害薬(PPI)とは、

胃酸を作る胃の壁細胞に効いて、胃酸ができるのを防ぐ胃薬です
消化性潰瘍・胃食道逆流症・NSAIDや集中治療が原因の消化性潰瘍・ピロリ菌の除去
などの病気の治療で主に使われるお薬です

具体的には
・オメプラゾン®・オメプラール®(オメプラゾール)
・タケプロン®(ランソプラゾール)
・パリエット®(ラベプラゾール)
・ネキシウム®(エソメプラゾール)
・タケキャブ®
などが日本で処方されているPPIです (かっこ内は後発(ジェネリック)医薬品名)

消化性潰瘍は、

  • お腹の痛みの他に吐血や下血の原因になり、
  • 時には命にかかわるような大出血をおこしうる病気です
  • 消化管内視鏡(胃カメラ・大腸カメラ)でクリップをかけて止めたり、
  • プロトンポンプ阻害薬(PPI)などの薬で潰瘍の治癒を促します

プロトンポンプ阻害薬(PPI)の副作用は、

  • 偽膜性大腸炎・顕微鏡的大腸炎
  • 低マグネシウム
  • 低カルシウム・骨粗鬆症
  • 鉄・ビタミンB12吸収障害

などが知られるようになってきています

偽膜性大腸炎とは、

  • C. difficile(シー・ディフィシール)という多剤耐性菌がおこす大腸の感染症で、
  • 通常は広域抗菌薬(菌を無差別に退治する薬)を使用したあとに発症します
  • 抗菌薬を使用せず、PPI単独での使用で偽膜性腸炎を発症する例も報告されています
  • 通常はバンコマイシン内服で治療しますが、稀に命に関わることもある病気です

顕微鏡的大腸炎は、

  • 10万人年あたり、2~16人で発症する大腸炎で、
    • (1万人年に1人とは、例えば1000人を10年間観察して1人発症という意味です)
  • 症状は水便(1日2~9回・血便はない)が主で、半数で腹痛がみられます
  • NSAID・PPI(特にランソプラゾール)・スタチン・SSRI(抗うつ薬の1種)・喫煙
    • などが原因になりうることが知られています

通常は原因になる薬をやめて改善するか試しますが、下痢が改善しなければ消化器内科で大腸内視鏡などの精密検査で他の病気がないか確認することになると思います

低マグネシウム(Mg)血症は、

PPIが原因の場合腸からのマグネシウムという金属が吸収されにくくなって発症します
血清Mg値がどの程度低いか次第で、

  • 筋肉の痙攣・虚弱・無気力・意識混濁
  • カリウム値がつられて下がることに伴う不整脈(命にかかわるものもあります)
  • 低カルシウム・ビタミンD活性化不良による骨代謝への悪影響

など様々な症状が知られています

低カルシウム血症・骨粗鬆症とは、

PPIにより胃がアルカリに傾き、カルシウムの吸収が阻害されることにより起きるとされます
骨粗鬆症やそれに伴う脆弱性骨折が増加する相関関係が、メタ解析(統計解析法の一種)でみられました
ただし、直接PPI内服した場合としない場合を比べて、骨折を起こし易いか否か(因果関係)は検証されておらず、まだ続報が待たれる状態です

鉄・ビタミンB12吸収障害とは、

赤血球自体や、その酸素を運ぶ役割に重要なヘモグロビンを作るのに重要な材料が吸収不良を起こします。要するに栄養不良による貧血を起こしやすいということです

まとめ:

さて、胃薬のプロトンポンプ阻害薬(PPI)を長期間使い続けると大腸・骨・貧血などによくないというお話でした。PPIは胃腸の出血時や集中治療のときには重要なお薬ですが、やめ時を逸して漫然と内服していると思わぬ副作用で足をすくわれます。長期内服されている場合には一度主治医の先生にご相談して休薬もご検討いただき、ご自身の健康長寿にお役立てください!

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この記事を書いた人

卒後15〜20年の病院内科医のナカノです。資格は医師・総合内科専門医・リウマチ専門医・アレルギー専門医(内科)・博士(医学)です。現在はアメリカのワシントンDC郊外の研究所で研究者として働いてます。
暮らしに役立つ知恵や皆さんの健康に寄与する情報を発信していければと考えています。

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