内科医の3Dナカノです
骨粗鬆症治療薬のフォルテオ®・テリボン® (テリパラチド)を使うことは決めたけど、どれを選んだらいいか分からないというケースの選び方を解説をします
[骨粗鬆症のお話の一覧]
骨粗鬆症診断:USPSTF骨密度測定の推奨
骨粗鬆症治療1:治療の概要
骨粗鬆症治療2:ビスフォスフォネート
骨粗鬆症治療3:プラリア
骨粗鬆症治療4:フォルテオ・テリボン・テリパラチド・テリパラチドの選び方 ←この記事
骨粗鬆症治療5:イベニティ
本日の結論:
週1回開業医の先生に通院できる場合の選択肢は、
テリボン®皮下注用56.5μg | 週1回@開業医の先生 | 2011年 | 44000円/月 |
※テリパラチド皮下注用56.5μg「サワイ」 | 週1回@開業医の先生 | 2022年 | 21000円/月 |
毎日ご自身かご家族で注射ができるという場合の選択肢は、
フォルテオ®皮下注キット600μg | 1日1回皮下注射 | 2010年 | 32000円/月 |
※テリパラチドBS皮下注キット600μg「モチダ」 | 1日1回皮下注射 | 2019年 | 23000円/月 |
週2回在宅で皮下注射ができるという場合の選択肢は、
テリボン®皮下注 28.2µgオートインジェクター | 週に2回皮下注射 | 2019年 | 48000円/月 |
※はバイオシミラー(後発医薬品類似品)です。薬効や副作用の情報は出揃っていませんが、毎月おおよそ1万円程安いです
フォルテオ®・テリボン® (テリパラチド)とは、
ヒト副甲状腺ホルモンという物質の一部(84アミノ酸残基のうち34残基)を大腸菌で人工的に合成したもので、骨芽細胞を元気にする作用があります。どの製剤も同じ物質がつかわれています
後発(ジェネリック)医薬品は、
新薬の20年間の特許が切れてから製造されるお薬で、研究開発費がかかっていない分安く手に入ります。特許期間の最初の方は臨床試験や審査で時間がかかるので、通常先発品の発売から5〜10年後のタイミングで後発医薬品は発売されます。一般的な化学合成される低分子化合物(たとえば痛み止めや抗菌薬)のお薬は、全く同じ物質を作ることができるので比較的すぐに承認されます。ただ、高分子化合物(蛋白質など)は完全に同じものをつくるのが難しく、バイオシミラー(BS)とよばれます
バイオシミラーは、
何らかの細胞(酵母や大腸菌など)を培養することで作られる高分子化合物です。一番最初のものはリウマチ・炎症性腸疾患の治療薬、レミケード®のバイオシミラーで、2013年に開発されました。レミケード®は597アミノ酸残基の巨大な化合物だったので完全コピーが難しいという議論がありました。バイオシミラーの発売前には、後発医薬品で不要な投与試験が必要です
テリパラチドのバイオシミラーは、
日本ではテリパラチド「モチダ」「サワイ」の2種類が発売されています
テリパラチドのバイオシミラーに関する論文も読んだのですが、(1)サイズ(分子量)がレミケードの5.7%と小さく、(2)元々人の体から取られた物質で、(3)グリコシレーション・蛋白翻訳後修飾が起きない、などの理由で注射しても異物として認識されにくいことが想定されています
また、バイオシミラーなので発売前に投与試験も行われており、投与後の血中濃度が非常に類似していることが確認されています。薬効や副作用などに関してはもう少し経たないとわからない所もありますが、安くなった分の値段の価値はあるのではないかとナカノは考えます
テリボン®皮下注 28.2µgオートインジェクターは、
テリボン®皮下注用56.5μgが週1回の通院を必須としていたのを、週2回在宅で皮下注射ができるように改善したものです。在宅医療が浸透してきているので、
- 訪問看護ステーションが週2回の皮下注射に対応してくれる場合や、
- ご家族が週2回来られる場合に、
有効な選択肢になりえます。値段が一番高い点だけは注意が必要です
まとめ:
今日はフォルテオ®・テリボン® (テリパラチド)の選び方を徹底解説しました。毎日注射できる・週2回ならできる・週1回通院できる、などの条件をまずご検討ください。バイオシミラーは長いものでも発売後まだ3年なので、もう少し経たないと情報が揃いません。値段は毎月1万円近く安くなるので費用対効果でご検討ください。それでは、身近に65歳以上の女性がおられたら骨粗鬆症についてお話いただいて、健康長寿にお役立てください!
[骨粗鬆症のお話の一覧]
骨粗鬆症診断:USPSTF骨密度測定の推奨
骨粗鬆症治療1:治療の概要
骨粗鬆症治療2:ビスフォスフォネート
骨粗鬆症治療3:プラリア
骨粗鬆症治療4:フォルテオ・テリボン・テリパラチド・テリパラチドの選び方 ←この記事
骨粗鬆症治療5:イベニティ
コメント