ビスフォスフォネート:4つの使うべき理由と使ってはいけない場合 [骨粗鬆症]

ビスフォスフォネート

内科医の3Dナカノです。今日は前回の骨粗鬆症の治療薬の概要の続きで、骨粗鬆症治療薬のビスフォスフォネートについてのお話です。

[骨粗鬆症のお話の一覧]
骨粗鬆症診断:USPSTF骨密度測定の推奨
骨粗鬆症治療1:治療の概要
骨粗鬆症治療2:ビスフォスフォネート ←この記事
骨粗鬆症治療3:プラリア
骨粗鬆症治療4:フォルテオ・テリボン・テリパラチドテリパラチドの選び方
骨粗鬆症治療5:イベニティ

目次

本日の結論:

ビスフォスフォネートは飲み方や副作用にクセがある薬ですが、
比較的安く使えて歴史のある(副作用がほぼ出尽くしている)薬です
自分にあった製剤を見つけて、賢く利用してください!

ビスフォスフォネートが向いているひと

・(内服の場合)30分以上座れる方
・認知症がなくて細かい指示が守れる方
・胃腸が極端に弱くない方
・喫煙・糖尿病・歯の病気がない方

ビスフォスフォネートが向いていないひと

・これから妊娠や出産を予定されている方
・すでに骨粗鬆症による骨折を繰り返している方
・歯の衛生状態がとてもわるい方
・がんの治療のめどがついていない方


ビスフォスフォネートは、

骨を溶かして吸収する破骨細胞という細胞を止めることで効く薬です。

  • ボナロン®・フォサマック® (アレンドロン酸)
  • ダイドロネル® (エチドロン酸)
  • ボノテオ®・リカルボン® (ミノドロン酸)
  • アクトネル®・ベネット® (リセドロン酸)
  • ボンビバ® (イバンドロン酸)
  • リクラスト® (ゾレドロン酸)

が日本で発売されています。
(かっこ内は有効成分名・後発(ジェネリック)医薬品名です)

古典的な内服薬には厳格なお作法があって、

  • 朝一番に何も食べずに、
  • 200mL の水で内服して、
  • 30分間横にならずに、
  • 水以外何も飲食しないこと

という修行僧のようなことをしないといけません

これはビスフォスフォネートが、
・胃に食物があると吸収される効率が悪いことと
・消化管(胃腸)の粘膜を荒らしてしまう性質があること
に関係しています

ビスフォスフォネートの使用方法には、

  • 頻度:年1回・月1回・週1回・毎日
  • 投与経路:内服・点滴

の分類があります

2006年に週1回製剤が出るまでは毎朝修行が必須だったのですが、今更毎朝修行をしたい人はいないはずなので、苦行になってしまう毎日製剤は省略して表にしました

内服点滴
年1回リクラスト®
月1回ボンビバ®
アクトネル®
ベネット®
ボノテオ®
リカルボン®
ボンビバ®
ボナロン®
週1回ボナロン®
フォサマック®
アクトネル®
ベネット®
日本で使用できる週1回・月1回・年1回のビスフォスフォネート製剤の一覧

月1回の内服製剤は、

毎月1日など決めて頂いて服用して頂いています

ただし、意外と忘れてしまうので毎週のルーチンに組み込む方がいいとおっしゃる方には、ナカノは週1回製剤をお出ししていました。薬価はひと月あたり1500~2500円(の2割負担など)と、とても経済的です

点滴製剤は、

利点
忘れっぽい方でも投与漏れがでにくい
30分間座っていられない方でもつかえる
・ひと月あたり3000~4500円(の2割負担など)で、比較的安い

欠点
・注射なので痛い
・クリニックの滞在時間が長くなる (15~30分・ただしボンビバ®は静脈内注射なのですぐ)

腰痛や物忘れなどで、30分間横にならない姿勢を保てない場合でも、治療を継続できる点が最大のメリットだと思います。高齢になればなるほど、更に骨折リスクが高まるのでこのメリットは見逃せません

ビスフォスフォネートの副作用は、

日本で30年以上使用されているのでほぼ出尽くしているといってよいでしょう。軽症のもので言えば胃腸への刺激(みぞおちの不快感)などが多いです

重症のものだと、

  • 顎骨壊死:歯が抜けやすくなったうえに、抜歯したあとの治りが異常に悪くなる
  • 非定型骨折:通常折れにくい場所の骨が折れて、骨折の治癒が異常に悪くなる

というものがあります
どちらも骨を溶かして新しい骨をつくる(リモデリング)のサイクルを止めて、ひたすら既存の古い構造に新しい骨を継ぎ足すという、破骨細胞をおさえる役割によるところが大きいと考えられています

ビスフォスフォネートの重症の副作用の頻度は、

1万~10万人年あたり1人ということで、比較的まれです
(1万人年に1人とは、例えば1000人を10年間観察して1人発症という意味です)

この副作用のリスクが高いひとは、

  • 注射製剤のビスフォスフォネート使用している方
  • がんと診断されたり、抗がん治療を受けている方
  • 既存の歯の病気 (抜歯・インプラント・合っていない入れ歯など)のある方
  • ステロイドを使用している方
  • 喫煙している方
  • 糖尿病の方

などであることが知られています。
ビスフォスフォネート開始前に歯の健康を万全にして、可能な限り禁煙することがオススメです

最後に、妊娠が可能な女性での注意点は、

  • 内服をやめてもすぐに血中からなくならない
  • 妊娠や授乳での安全性についてはまだわかっていない

です
ビスフォスフォネートは1回でも内服すると全身の骨に取り込まれて、少しずつ血液と腎臓を経て尿を通じて体から出ていきます。妊娠したことが分かった段階で内服をやめても血液中にずっと微量ながら放出され続けます
ビスフォスフォネートは通常閉経後の女性に使われることを前提にしているので、妊娠や授乳での安全性については十分には分かっていません。今後妊娠を考えている方は避けた方が無難です

まとめ:

ひとつひとつのビスフォスフォネート製剤には、ここで触れることが出来なかった微妙な違いがあるので、処方をしてくださる担当の先生と今一度ご相談ください
ビスフォスフォネートは飲み方や副作用にクセがある薬ですが、比較的安くで使えて歴史のある(副作用がほぼ出尽くしている)薬です。自分にあった製剤を賢く利用して、健康長寿にお役立てください!


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この記事を書いた人

卒後15〜20年の病院内科医のナカノです。資格は医師・総合内科専門医・リウマチ専門医・アレルギー専門医(内科)・博士(医学)です。現在はアメリカのワシントンDC郊外の研究所で研究者として働いてます。
暮らしに役立つ知恵や皆さんの健康に寄与する情報を発信していければと考えています。

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