内科医の3Dナカノです。今日は何ら症状のない高尿酸血症は治療をオススメしないというお話を、アメリカリウマチ学会の推奨と品質が高い日本からの論文を参考にお話します
本日の結論:
何ら症状がない高尿酸血症にたいする、尿酸降下薬(ULT)による治療はオススメしません
もう少し掘り下げましょう
高尿酸血症の治療を慎重に考える必要がある場合は、
・痛風発作・痛風結節・尿管結石がない、
・すでに皮膚病・深刻なアレルギーがある、
・家族に尿酸降下薬でアレルギーが出た人がいる、
などです
高尿酸血症の治療が向く場合は、
・年2回以上の痛風発作があった
・痛風結節(白い塊)が体のどこかに出来ている
・尿酸値が悪いために腎臓に石が出来ている
・レントゲンなどで高尿酸血症によるとみられる異常がある
などです
2020年のアメリカリウマチ学会(ACR)推奨(案):
痛風発作や痛風結節がない高尿酸血症で尿酸降下薬(ULT)を開始することは、条件付きで反対する
ACR 2020
言葉の解説をします
日本痛風・尿酸核酸学会のガイドライン(2019年改訂版)は、
- 血清尿酸値9以上で無条件
- 血清尿酸値8以上で条件付きで
- 尿酸降下薬(ULT)開始を推奨しています
欧州と米国の推奨では尿酸降下薬(ULT)で治療すべきは、
EULAR(欧州) 2016 | ACR(米国) 2020 |
年2回以上の痛風発作 | 年2回以上の痛風発作 |
痛風結節 | 痛風結節 |
痛風関節症 | 画像上のダメージ |
腎結石 | 腎結石 |
痛風発作一回 +CKD stage 3以上* +尿酸値9mg/dL以上 |
*腎臓の働きが大まかに正常の半分以下
EULAR:ヨーロッパリウマチ学会 ACR:アメリカリウマチ学会
となっています。日本の推奨とかなり違いますね
痛風結節は、
手足・肘・耳(耳介)に比較的できやすい尿酸結晶の塊です。医師が診察しないと気づかれないときがあるので、いつ検査しても尿酸値が高い場合には、一度皮膚科やリウマチ科を受診してチェックしてもらうのがよいかもしれません
アメリカリウマチ学会(ACR)2020推奨(案)では
腎機能が中くらいに悪く(平均GFR 45)・無症候性(痛風発作や結節がない)高尿酸血症があるケースで尿酸降下薬を2年間使用した日本の臨床試験を引用していました。(1)痛風発作の発症率は治療したひとで1%以下、治療しなかったひとで5%だったこと、(2)治療してもは腎障害の進行を防がなかったことを根拠にしていました
尿酸降下薬(ULT)の副作用は、
- 主に皮疹(皮膚が炎症を起こす)です
- 特に薬剤性過敏症症候群という状態になると薬をやめても改善せず、
- ステロイドなど、免疫を中長期間抑える治療が必要がになる可能性があります
ナカノは現時点では有益性より実害の方が深刻である可能性が高いと判断し、尿酸降下薬の開始基準は日本のものでなくEULAR/ACRの推奨をオススメします
中国・東南アジアで多い白血球の血液型(HLA-B*5801)はアロプリノール関連のアレルギーと強い関係が示唆されていて、これらの国では治療開始前に検査が推奨されています。日本ではこの血液型の頻度は一般人の約1.2%(マニアックな数字を出すなら、アリル頻度で0.58%)と比較的稀なので投与前検査は推奨されません。ただし遺伝はするので、ご家族でアロプリノールのアレルギーのひとがいたら避けるべきだと考えます
まとめ:
さて、今日の症状のない高尿酸血症の治療はオススメしません、というお話はいかがでしたでしょうか。日本から尿酸降下薬使っても腎臓にいいことをしないという質の高い報告が出たので、そろそろULTの使い方を国際標準に合わせる時がきたのかもしれません。追試験やガイドラインの更新があったらまたご報告します。是非コンテンツを健康長寿にお役立てください!
なにか他に痛風・高尿酸血症で気になる事があれば、以下の解説記事をご覧ください
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