尿酸降下薬の選び方 [痛風・高尿酸]

尿酸降下薬

内科医の3Dナカノです。今日は尿酸を下げる薬(ULT)の選び方を、ヨーロッパリウマチ学会とアメリカリウマチ学会の推奨をもとに解説します
ULTの始め方治療目標は別でお話します

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目次

本日の結論:

腎臓が正常な場合:
ザイロリック® (アロプリノール) 100mg 1日1錠で開始して2-4週ごとに100mg増量(最大300)
中等度腎障害・ザイロリック®が使えない場合:
フェブリク® (フェブキソスタット) 10mg 1日1錠で開始して最大60mgまで増量

2016年ヨーロッパリウマチ学会(EULAR)推奨:

腎臓が正常ならザイロリック® (アロプリノール)100mg 1日1錠で開始して、

2-4週毎に100mgずつ増量する

EULAR

治療目標に到達しなければ、フェブリク® (フェブキソスタット)に変更するか、

尿酸排泄促進薬を組み合わせる

EULAR

2020年のアメリカリウマチ学会(ACR)推奨(案):

心血管疾患(CVD)の履歴または新規発症があった場合、フェブリク® (フェブキソスタット)から他のULTに切り替えを条件付きで推奨する

ACR

言葉の解説をします

尿酸降下薬(ULT)とは、

尿酸代謝にかかわるキサンチンオキシダーゼを阻害する薬で、

  • ザイロリック® (アロプリノール)
  • フェブリク® (フェブキソスタット)

の2種類が現在使われています (カッコ内は後発医薬品名)
キサンチンオキシダーゼは水溶性のハイポキサンチンが、水に溶けづらい尿酸に変化するのに必要な酵素です。ハイポキサンチンのままなら尿中に効率よく排泄されるので、ここを止めて尿酸ができるのを防ぐことが尿酸値を下げるための仕組みです

尿酸降下薬
尿酸降下薬のザイロリック®とフェブリク®

ザイロリック® (アロプリノール)とは、

  • 超安価で、50年以上の歴史がある薬で、
  • 通常腎不全や飲み合わせの問題がなければ第一選択薬です
  • 主な副作用は皮疹(皮膚が炎症を起こす)です
  • 皮膚にトラブルがおきたら皮膚科・主治医受診を検討して下さい

1969年に日本で使われ始めたお薬で、超安価(Max300mg1ヶ月でも700円)で、副作用は長い歴史の中で出尽くしています。主な副作用は皮膚に出ることが分かっています。特に薬剤性過敏症症候群という状態になるとヒトヘルペスウイルス6型(HHV-6)が活性化しているので、お薬をやめただけでは皮膚が治らない場合があります。皮膚のトラブルがあったら重症化する前に薬を一旦とめて皮膚科・主治医に受診をご検討ください
ザイロリックは100mg1錠から始めると皮膚の副作用が出にくいかもしれないと推奨されています。日本では1日300mgまでしかつかえず、この量だと30~50%のひとで治療目標を達成できないと考えられています

フェブリク® (フェブキソスタット)とは、

  • 比較的安価で、10年以上使われている薬で、
  • ザイロリックが使えないか、効果が不十分の場合に使用されます
  • 腎臓が中程度悪くてもつかえて、
  • ザイロリックで皮疹がでたひとでも検討してよいとされます

2011年に発売されたお薬で、比較的安価(Max60mg1ヶ月でも1200円)です。欧米では120mgまで使えますが、本邦では1日60mgまでとなっています。ザイロリック®とフェブリク®では交差性がなく、片方で皮疹が出た場合でも他方が使えるとされています
心血管疾患(CVD)での死亡のリスクが高まるかもしれないという報告と、リスクは変わらないとする両方の報告があります。米国推奨では、ご本人と相談して使わないという選択もありうるとしています

尿酸排泄促進薬とは、

尿中に尿酸を排泄することで尿酸値を低下させる薬です

  • ユリノーム® (ベンズブロマロン)
  • ベネシッド® (プロベネシド)
  • (ズラムピック® (レシヌラド)):日本未発売

などが発売されています
当然ながら尿管結石がある例では、結石が大きくなる可能性があり禁忌(使ってはいけない)です。裏技的に使われているのをまれに目にする程度で、病院内科医のナカノが痛風の治療目的で処方したことはありません

ユリノーム® (ベンズブロマロン)は、

50mg錠を1日半錠から3錠まで日本では使用できます
プロベネシドより効力は強いとされ、単独かアロプリノールに追加して使用します
肝障害と重度腎障害(eGFR 30以下)がある場合は投与ができません

ベネシッド® (プロベネシド)は、

250mg錠を1日2~8錠までで使用できます
痛風発作や尿管結石を予防する目的で2錠から通常開始します

まとめ:

さて、今日の尿酸を下げる薬の選び方のお話はいかがでしたでしょうか。基本アロプリノールとフェブキソスタットで、尿酸値の目標を達成できることが多いです。次回は尿酸値の目標についてお話したいと思います。是非コンテンツを健康長寿にお役立てください!

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この記事を書いた人

卒後15〜20年の病院内科医のナカノです。資格は医師・総合内科専門医・リウマチ専門医・アレルギー専門医(内科)・博士(医学)です。現在はアメリカのワシントンDC郊外の研究所で研究者として働いてます。
暮らしに役立つ知恵や皆さんの健康に寄与する情報を発信していければと考えています。

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