尿酸降下薬の始め方 [痛風・高尿酸]

コルヒチン

内科医の3Dナカノです。今日は尿酸値を下げる薬(ULT)の始め方について、ヨーロッパとアメリカリウマチ学会の推奨を参考にお話します
薬の選び方治療の目標については、また別途お話します

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目次

本日の結論:

年2回以上の痛風発作痛風結節・画像上のダメージ・腎結石がある場合に尿酸降下薬(ULT)を始めましょう
何ら症状がない無症候性高尿酸血症のULT治療は、根拠が乏しいのでオススメしません
ULTを始めるときは少量から始めて少しずつ増やすか、発作予防薬(コルヒチンかNSAID)を6ヶ月間一緒に内服しましょう

2016年のヨーロッパリウマチ学会(EULAR)推奨:

ULT開始後6か月間は発作予防薬を併用する

発作予防薬としてコルヒチンが使えない場合は、NSAIDを使用する

EULAR

痛風の診断が確実な場合にULTを検討する

年2回以上の痛風発作・痛風結節・痛風関節症・腎結石がある場合にULTを勧める

40歳未満・血清尿酸値8以上の場合・合併症(腎障害・高血圧・虚血性心疾患・心不全)がある場合、診断確定後早期治療開始を推奨する

治療を決定する際には患者本人の意向を大切にする

EULAR

2020年のアメリカリウマチ学会(ACR)推奨(案):

痛風発作や痛風結節がない高尿酸血症でULTを開始することには、条件付きで反対する

ACR

言葉の解説をします

発作予防薬は、

  • 尿酸降下薬(ULT)の開始後6ヶ月間におきやすい、痛風発作をおきにくくします
  • ULTを少量から開始すると、発作予防薬の必要度合は下がります

尿酸降下薬(ULT)の開始時期に痛風発作が起きやすいことが知られています。患者さんの治療に対する前向きな気持ちを削がないために、ULTの治療が落ち着くまで6ヶ月間は、発作予防薬(コルヒチンかNSAID)を併用することが推奨されています。ただし、ULTを少量から開始すると発作はほとんど起きないこともわかっているので、患者さんの要望に沿って決めましょう、と記載されています

コルヒチンは、

  • 発作予防の場合、1日1~2錠(0.5~1mg)

腎臓が悪い・スタチンを内服している場合は神経や筋肉の毒性がでやすいので、筋肉痛力が入らないなどの症状に注意が必要です
種々のお薬との飲み合わせもよくありません (詳細:P糖蛋白やCYP3A4の阻害をするお薬です)
詳しくは痛風発作の治療のお話をご覧になってください

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NSAIDは、

  • コルヒチンが使用できないときに使用されます
  • ナイキサン100mgを一日朝晩2錠ずつ(計400mg)

使用されることが多いです
胃腸と腎臓が悪い人においては注意が必要なお薬です
詳しくは痛風発作の治療のお話をご覧になってください

欧州と米国学会の推奨において、

尿酸降下薬(ULT)で治療すべきは、

EULAR(欧州) 2016ACR(米国) 2020
年2回以上の痛風発作年2回以上の痛風発作
痛風結節痛風結節
痛風関節症画像上のダメージ
腎結石腎結石
痛風発作一回
+CKD stage 3以上
+尿酸値9mg/dL以上
ULTを開始する欧州と米国リウマチ学会の要件

となっています。画像上のダメージとは痛風結晶のせいで、骨が一部溶けているようにみえるものを指します
日本痛風・尿酸核酸学会のガイドラインは尿酸値9mg/dL以上で無条件でULT開始としていたのもあって、日本では尿酸値だけでULTを使用しているケースをよくみました

米国リウマチ学会(ACR)2020推奨(案)では

無症候性(痛風発作や結節がない)高尿酸血症でULTを2年間実施した日本の臨床試験を引用して、(1)痛風発作の発症率はULTを使用したグループで1%以下、ULTを使用しなかったグループで5%と効果が限定的だったこと、(2)ULTは腎障害の進行を防がなかった

以上の2点をULT非推奨の根拠にしていました

尿酸降下薬(ULT)に副作用がないわけではないので、

ULTを開始するか否かに関してはナカノは日本のものでなく、EULAR/ACRの推奨をオススメしたいです
すなわち、特に問題が起こっていない高尿酸血症の治療は根拠が乏しいので行わない方が良いと考えます

まとめ:

さて、今日の痛風発作・痛風結節・腎結石などがあったら尿酸降下薬(ULT)を始めましょうというお話はいかがでしたでしょうか。昔からナカノは、痛風になったことがないひとでULTが使われているのをみて、微妙な気持ちになっていました。日本からULT使っても腎臓を保護する作用はない、という質の高い報告が出ました。そろそろULTの使い方を国際標準に合わせて、無症状の場合はULTを開始しない選択をする時がきたのかもしれません。

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この記事を書いた人

卒後15〜20年の病院内科医のナカノです。資格は医師・総合内科専門医・リウマチ専門医・アレルギー専門医(内科)・博士(医学)です。現在はアメリカのワシントンDC郊外の研究所で研究者として働いてます。
暮らしに役立つ知恵や皆さんの健康に寄与する情報を発信していければと考えています。

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