フローサイトメトリーのデータ解析について [FACS]

FMO control

フローサイトメトリーのデータ解析について詳細に解説します。原則、臨床検査技師の方・血液内科医師・医生物学的な研究をする研究者を、想定聴衆として書きます。皆様に役に立つ内容ではないものの、日本語での情報は不十分だと感じてます。今後の日本発のサイトメトリーの臨床・研究のスタンダードが上がることを祈念しながら、医学者ナカノが解説していきます


目次

本日の結論:

  • フローサイトメトリーの結果はFCSファイル(ヘッダー+データ)に出力されます
  • ヘッダーは検体測定時のパラメータ(日時・ボルテージ・レーザー出力)を含みます
  • データ2次元のスプレッドシートに記録されます
  • FMOとはFluorescence Minus Oneの略で、重染色から1色だけ抜いたものです
  • FMOはゲート(細胞の集団を分ける操作)するのに、威力を発揮します

FCSとは、

  • Flow cytometry standard file の略で、
  • フローサイトメーターからの標準的な出力データ形式です
  • FCS 3.0や3.1が現在広く使用されています
  • 使用したサイトメーターやパラメーターを保存するヘッダー部分と、
  • MSエクセルのような2次元のデータ部分で構成されます
  • 2次元のデータ部分は各行が一つ一つのイベントに対応しています

FCS fileのヘッダー部分には、

  • 測定の日時
  • 使ったサイトメーター
  • CS&Tの日時とBeadsのLot
  • レーザーの設定 (遅延時間・Area scaling factor)
  • 各チャンネルのボルテージ
  • コンペンセーションがされている場合はMatrix

などの情報が組み込まれています

FCS fileのデータ部分には、

  • 2次元のスプレッドシート(MSエクセルのようなデータ)で構成されます
  • 2次元のデータ部分は各行が一つ一つのイベントに対応しています

収集されたデータはMSエクセルのような2次元のデータで格納されています。これをFlowjoやFCS Expressなどのソフトで2次元で表示して解析するのが一般的な解析方法です

FSc-AFSc-WFSc-HSSc-ASSc-WSSc-HFITC-APerCP-APE-A….APC-AAPCCy7-A
55123521645321534568335683256810156820085864….21061205984
65142625486354848562475214625415023512632084….40852105884
….
5584853548546873587934584335845008440486481….61848185483
FSc, SScはA,H,Wを、蛍光チャンネルはAだけを記録する場合が多いと思います

解析の一般的な流れは、

  1. ダブレットの除去
  2. Compensation controlのGating・Compensationの適用
  3. 死細胞の除去・解析対象細胞の選択
  4. 各種指標をFMO controlなどを使用してゲーティングする
  5. 各種データ(陽性率・MFIなど)を出力

です
ダブレットの除去に関しては、以前の記事で詳しく解説しています

コンペンセーションに関しては、以下の記事で詳しく解説しています

死細胞除去に関しては、以下の記事で詳しく解説しています

解析対象細胞の選択とは、

  • ヒト白血球の解析ならCD45陽性細胞、
  • 蛋白強制発現系の実験ならGFP陽性細胞などです

例えばヒト白血球の解析をする目的なら、一般的な白血球であまねく陽性であるマーカーのCD45陽性細胞の選択がしばしば行われています。例えばベクターの強制発現系(TransfectionやTransduction)を使用している場合には、GFP(緑色蛍光蛋白)などの蛍光色素陽性細胞を選択して解析やソートを行うことも多いと思います

X軸は死細胞染色・Y軸はそれぞれヒト白血球のマーカーCD45と、強制発現系のマーカーのeGFP

FMO controlとは、

  • Fluorescence Minus Oneの略で、重染色(Full stained)から1色だけ抜いたものです
  • ゲート(細胞の集団を分ける操作)するのに、威力を発揮します

現代のサイトメトリーの実験では多重染色が可能になったために、他のチャンネルからの漏れ込みを検討することが益々重要になっています。FMOはサイトメトリーでゲートをするのに最適とされるコントロールです。以下の例では陰性(Negative)と弱陽性(Dim)の境目が、わかりやすくなっています
FMOが真価を発揮するのは漏れ込みが非常に大きい例なので、わざと漏れ込みやすくした例を「Fluorescence Minus One control」などで検索して確認してみてください(適切なパネル設計ができていれば、これほどまでには漏れ込まないで済むと信じたいですが・・・)

Fluorescence Minus One controlは、他のチャンネルからの漏れ込みをあらわし、ゲートで威力を発揮します

解析データの出力は、

  • Table editorやLayout editorを使って変数を指定して、
  • Create tableやBatch reportなどの形で出力します

まとめ:

さて、今日は解析の流れについて解説しました。Flowjoの使い方の詳細は今回は割愛しましたが、もしご希望があればコメントなどでご要望をお寄せください。自信を持って正しい結果を出せるように頑張っていきましょう!

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この記事を書いた人

卒後15〜20年の病院内科医のナカノです。資格は医師・総合内科専門医・リウマチ専門医・アレルギー専門医(内科)・博士(医学)です。現在はアメリカのワシントンDC郊外の研究所で研究者として働いてます。
暮らしに役立つ知恵や皆さんの健康に寄与する情報を発信していければと考えています。

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