本日からフローサイトメトリーについて説明していきます。原則、臨床検査技師の方・血液内科医師・医生物学的な研究をする研究者を、想定聴衆として書きます。皆様に役に立つ内容ではないものの、日本語での情報は不十分だと感じてます。今後の日本発のサイトメトリーの臨床・研究のスタンダードが上がることを祈念しながら、医学者ナカノが解説していきます
本日の結論:
- 細胞の種類や蛋白質の存在量を検出できる検査・実験方法で、
- 短時間にたくさんの検体を処理できるので、定量性に優れています
- フルイディクス・レーザー・データ収集・解析に分かれているので、
- それぞれについて正しい知識を身につけて、自信を持って結果を出してください
フローサイトメトリーは、
主に細胞の表面に標識をつけてどの種類の細胞にどれだけ蛋白質が存在しているのか、などを見ることができる検査・実験手法です。例えば、医療現場ではHIVに感染している方のCD4陽性T細胞数(いわゆるヘルパーT cell)の数だったり、白血病の方の血中のがん細胞の性質だったりを調べるのに、大きめの総合病院では日常的に使われています
蛍光色素で標識した細胞に隊列を作らせて並べて、それにレーザー光を照射します。蛍光色素に特有な光がどの程度返ってくるかを測定する方法で、細胞の種類や蛋白質の存在量を検出します。顕微鏡と違って数万個の細胞でも数分で処理が可能なので、定量性に優れています
フローサイトメトリーに使う機械のことをサイトメーターといいます
Light Scatterとは
細胞の大きさをみるForward Scatter (FSc)と、
細胞内の構造の複雑さをみるSide Scatter (SSc)に分かれています
例えば採血検体ではその細胞の大きさと内部構造の複雑さだけで、大まかにリンパ球・単球・好中球という3種類の白血球に分類できます(染色は不要です)
フローサイトメトリーに使われている技術は、
- フルイディクス(Fluidics)
- レーザー光の照射と光の分離
- PMTやAPDでのデータ収集
- データ解析
にわかれています
フルイディクス(Fluidics)とは、
細胞が一つ一つ規則正しくレーザー光に照射されるように水流を作る仕組みです。シース(Sheath)液が流れているところにサンプル(患者や実験検体)を注入して乱流が起きない(層流)ように流れを巧みにコントロールしています
フルイディクスの詳細な解説は以下の記事をご覧ください
レーザー光の照射と光の分離とは、
レーザーは波長が一定の光源で、蛍光色素を励起することができます。蛍光色素は励起されるとレーザー光より長波長よりの蛍光を発します。これを様々なフィルターに分離することで、一本のレーザーでたくさんの蛍光強度を測定することができます。詳細は以下の記事をご覧ください
PMTやAPDでのデータ収集とは、
PMTは光電子増幅管・APDはアバランチフォトダイオードです。わずかに検出された光子を増やして、電気信号・データに変換する仕組みです。大きいスケールのPMTがカミオカンデなどニュートリノを検出する実験場で使われています。最近のサイトメーターでは同時に検出できる蛍光色素の数ぶんだけということで、8~50個程度が搭載されています。
データ解析とは、
FCS(Flowcytometry standard file) 3.0というフォーマットが広く使用されています。
収集されたデータはMSエクセルのような2次元のデータで格納されています。これをFlowjoやFCS Expressなどのソフトで2次元で表示して解析するのが一般的な解析方法です
一般的にはコンペンセーションやゲートをする過程が、恣意的(データが意のままに操作できてしまう)になるのではないかとご心配ではないかと思います。今後一つ一つ順番に解説していきます
まとめ:
さて、今日のフローサイトメトリーの概略のお話は如何だったでしょうか。一つ一つは改めて実例を使いながら詳しく掘り下げるので、読んでも不明な点は質問をお寄せください。自信を持って正しい結果を出せるように頑張っていきましょう!
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