糖尿病の診断 (ADA2023)[糖尿病]

糖尿病の検査

内科医の3Dナカノが糖尿病の診断の最新事情について解説します。米国糖尿病学会の年末年始恒例イベントの、ガイドライン更新時期がやってきました。内科医3Dナカノは、成人の2型糖尿病(1型糖尿病・妊娠糖尿病・小児・日本で珍しい病気に合併した糖尿病は除く)についてシリーズで取り上げますので、一緒に勉強していってください

目次

本日の結論:

  • 糖尿病は過食・運動不足・遺伝などが原因で、血中の糖分が制御できなくなる病気です
  • アジア系でBMIが23以上の成人は糖尿病の検査を検討しましょう
  • 糖尿病スクリーニングはFPG・75gOGTT・HbA1cが、2010年以来推奨されています
    • FPG: 空腹時血漿糖値, 75gOGTT: 75gぶどう糖負荷試験2時間血漿糖値, HbA1c: ヘモグロビンA1c
  • HbA1cは固有の欠点があるので、血糖値と合わせて上手に使っていきましょう

結論のもとになった米国糖尿病学会(ADA)推奨は次のとおりです

2.8 アジア系でBMIが23以上の成人は糖尿病の検査を検討する

2.9 リスクがない場合でも35歳でスクリーニングを始める

2.10 スクリーニング正常で、体重増・症状がなければ検査は3年毎

2.11 2型糖尿病と前糖尿病のスクリーニングはFPG・75gOGTT・A1cをおこなう

 FPG: 空腹時血漿糖値, 75gOGTT: 75gぶどう糖負荷試験2時間血漿糖値, A1c: ヘモグロビンA1c

2.12 75gOGTTを実施するときは検査前3日間は150g/日の炭水化物を接種する

2.13 2型糖尿病と前糖尿病の方で、心血管疾患のリスクを把握し治療をおこなう

米国糖尿病学会推奨2023

言葉の解説をします

糖尿病とは、

過剰なカロリー・運動不足・遺伝などが原因で、血中の糖分(ブドウ糖)が制御できなくなる病気です。血液から体中の臓器にブドウ糖を取り込むのに必要なインスリンという物質が不足しているか、効きが悪いことが根本の病態です。血中にあり余ったブドウ糖(栄養分)が尿中に漏れ出てしまうために糖尿病という病名になっています

糖尿病の診断基準は、

糖尿病診断基準
  • 空腹時血糖126mg/dL以上 (最低8時間カロリー摂取なし)
  • 75gブドウ糖負荷試験2時間血糖値が200mg/dL以上 (WHOの定めによる)
  • ヘモグロビンA1c(HbA1c) 6.5%以上 (NGSP認定・DCCT測定法準拠)
  • 典型症状があって随時血糖200mg/dL以上 (典型症状は脱水や意図せぬ体重減少)

のいずれかを満たす状態です
この基準自体は2010年にHbA1cが追加になって以来、10年以上ほぼ変わっていません

糖尿病の各診断基準の数値の意味合いは、以前に解説しているのでご参照ください

前糖尿病・糖尿病予備軍(Prediabetes)とは、

異常な炭水化物代謝があるものの、糖尿病の基準を満たさない状態です
糖尿病や心血管疾患(CVD)のリスクとして重要です
毎年糖尿病に進展していないか検査を推奨されています

糖尿病と前糖尿病の基準

アジア系でBMIが23以上の成人は糖尿病の検査が推奨されています

アジア系以外だとBMIが25までOKなので、
これは、米国医師会の推奨ともすりあわせられており見解が一致しています

そこ、あわせてきたか!と思いましたね


BMIと糖尿病のスクリーニングについては、以前に解説しているのでご参照ください

HbA1cの利点

  • 絶食が必要ない
  • 検査の精度が高い (何回同じ検体を検査しても非常に近い結果)
  • ストレス・栄養・病気による日較差が少ない
  • 3か月の平均血糖値と正の相関がある

HbA1cの欠点

  • 糖尿病診断における感度が低い(しばしば陰性)
  • コストが高く、発展途上国では検査が出来ない
  • 検査の精度が下がる条件がある
    • 血液透析・妊娠(2期と3期)・HIV治療・出血・輸血・貧血・増血剤の注射(腎臓病の治療)

血糖とHbA1cの検査間で食い違いがあったら、

HbA1cよりも空腹時血糖・75gOGTTのほうが精度が高く信用できるとされています

まとめ:

さて、糖尿病の診断・検査のガイドラインはいかがだったでしょうか。診断自体の大幅なアップデートはありませんでした。ただ、毎年見直しをかけているというのは、アメリカ糖尿病学会の凄いところだと3Dナカノは思います。検診などで糖尿病の項目が引っかかることがあったら、早めに受診してください。是非記事を健康長寿にお役立てください!

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この記事を書いた人

卒後15〜20年の病院内科医のナカノです。資格は医師・総合内科専門医・リウマチ専門医・アレルギー専門医(内科)・博士(医学)です。現在はアメリカのワシントンDC郊外の研究所で研究者として働いてます。
暮らしに役立つ知恵や皆さんの健康に寄与する情報を発信していければと考えています。

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