尿検査の解釈 [慢性腎臓病CKD]

尿定性検査

検査テープによる尿定性検査
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内科医の3Dナカノです。今日は腎臓病のお話をする前に尿検査の評価方法のお話です

当Blogの慢性腎臓病の記事は、KDIGO(国際的腎臓病ガイドライン機構)のガイドライン2012や日本腎臓学会のCKDガイド2012ガイドライン2018などを参考にしています

[慢性腎臓病CKDのお話の一覧]
腎臓病の診断と意義: 尿検査の解釈 ←この記事慢性腎臓病の診断重要性
腎臓病の注意点:   食事の注意点生活の注意点
腎臓病の治療一般論: 血圧の治療貧血の治療カルシウム・リン
腎臓病の個別の治療: 腎臓が悪くなる特別な原因がある場合
腎代替療法:     なぜ必要か賢い選び方

目次

本日の結論:

腎臓病の早期発見に、検尿(蛋白たんぱく尿・血尿)は有効です
糖尿病性腎症の早期発見には、微量アルブミン尿という鋭敏な指標を使います
一日の尿蛋白の概算を調べるのに、蛋白クレアチニン比が便利です


言葉の解説をします

尿検査は、

  • 尿定性:潜血・蛋白(+糖尿病の場合、微量アルブミン尿)
  • 尿沈渣ちんさ:硝子円柱はOK、赤血球円柱・白血球円柱・顆粒円柱などは異常

の2種類に分かれます

尿定性とは、

尿に含まれる

  • 潜血せんけつ=血液と、
  • 蛋白=タンパク質を、

それぞれ検査テープの色の変化で検出する方法です

検査テープによる尿定性検査
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潜血は、

結石がん糸球体腎炎(腎臓自体の炎症)・感染症月経など多様な理由で陽性になります

尿路(腎臓(糸球体)~腎臓(腎盂)~輸尿管~膀胱~外尿道口)のどこかの出血を示します。尿路結石でもがんでも糸球体腎炎(腎臓本体の炎症による病気)でも感染症でも陽性になりえます。女性の場合、月経で陽性になることもしばしばです(月経後に再検査をします)
潜血だけが陽性(蛋白が陰性)の場合、腎臓そのものの病気よりも泌尿器科の病気(結石・がん・感染症)などの可能性が高いと考えられています

腎臓だけではなく、腎臓と膀胱の間の輸尿管・膀胱から尿道にかけても出血源になりえます
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蛋白は、

糸球体腎炎(腎臓自体の病気)・高血圧糖尿病など、陽性なら病気の可能性が高いです

テープで測定する方法は(-)(±)(1+)(2+)(3+)などの結果が得られます。尿中蛋白を正確にmg/dL単位で測定する方法(尿蛋白定量と呼ばれる)もあります
糖尿病性腎症の場合はより微量な漏出を捉えることが重要で、微量アルブミン尿という鋭敏な指標を用いて評価します

蛋白と潜血が両方陽性だと、

腎臓が炎症を起こしている糸球体腎炎という病気の可能性が高くなります

糸球体腎炎には色々な原因があって、膠原病(全身性エリテマトーデス・血管炎症候群)・グッドパスチャー症候群・感染症などに分かれます。急いで治療をしないと命に関わる場合があるので、腎臓内科や膠原病内科に紹介されることになると思います

24時間蓄尿は、

一日のすべての尿を回収して尿中に失われた蛋白量を測定する方法です
入院では比較的容易ですが、社会生活をしながら尿を回収するのは必ずしも簡単では無いのでその場合は外来に来た時の尿(スポット尿と呼ばれます)を使います。

スポット尿は、

外来に来た時の尿を評価する方法で、
蛋白クレアチニン比を計算することで一日の尿蛋白の総量を予想することができます

尿はたくさん水を飲むと薄まるので、

尿蛋白だけを評価しても正しい結果が得られません
健常人はおおよそ1日でクレアチニンを1g尿中に排泄することがわかっているので、尿中に例えば0.2gのクレアチニンが含まれていたら一日の1/5分に該当するということがわかります。尿中に蛋白が例えば0.3g含まれている場合5倍して1.5g/gCr(蛋白クレアチニン比)の蛋白が1日で尿中に失われているという計算ができます

蛋白クレアチニン比の計算式

尿蛋白の評価方法(A1~3)の基準は、

蛋白尿区分A1A2A3
糖尿病尿アルブミン定量 (mg/日)
尿アルブミン/Cr比 (mg/gCr)
正常
30未満
微量アルブミン尿
30~299
顕性けんせいアルブミン尿
300以上
糖尿病以外尿蛋白定量 (g/日)
尿蛋白/Cr比 (g/gCr)
正常
0.15未満
軽度蛋白尿
0.15~0.49
高度蛋白尿
0.5以上
糖尿病以外尿定性(目安)(-)~(±)(-)~(2+)(+)~(4+)
Crはクレアチニンの略

糖尿病の場合、微量アルブミン尿を測定して鋭敏にA2を診断することを目指します
糖尿病以外の場合には、蛋白クレアチニン比を測定して0.15g以上でA2となります

尿沈渣は、

顕微鏡で尿に含まれる固体・細胞成分を評価する方法です
観察された細胞次第で病気の内容がある程度絞り込める性質があります

病気観察されうるもの
異常なし何もない・硝子円柱
がん・尿路結石・月経赤血球
糸球体腎炎 (腎臓の炎症)赤血球円柱・白血球円柱・顆粒円柱など
尿路感染症白血球・細菌など

まとめ:

今日の尿検査の解釈の仕方のお話はいかがでしたでしょうか。検尿は腎臓病の早期発見に有効で、尿蛋白のほうが尿潜血より腎臓自体の病気を示唆していることがご理解いただければと思います。蛋白の評価方法は蓄尿がベストですが、蛋白クレアチニン比を使えば概算は分かるのでよく使われています。次回は慢性腎臓病の診断のお話をします。是非コンテンツを健康長寿にお役立てください!

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この記事を書いた人

卒後15〜20年の病院内科医のナカノです。資格は医師・総合内科専門医・リウマチ専門医・アレルギー専門医(内科)・博士(医学)です。現在はアメリカのワシントンDC郊外の研究所で研究者として働いてます。
暮らしに役立つ知恵や皆さんの健康に寄与する情報を発信していければと考えています。

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