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内科医の3Dナカノです。今日は本当に腎臓が役割を終えたときにどういう治療の選択肢があるか、というお話です
[慢性腎臓病CKDのお話の一覧]
腎臓病の診断と意義: 尿検査の解釈・慢性腎臓病の診断・重要性
腎臓病の注意点: 食事の注意点・生活の注意点
腎臓病の治療一般論: 血圧の治療・貧血の治療・カルシウム・リン
腎臓病の個別の治療: 腎臓が悪くなる特別な原因がある場合
腎代替療法: なぜ必要か・賢い選び方 ←この記事
本日の結論:
誤解と語弊を恐れずに極論を言わせてもらえば、
血液透析が向いているひとは、
時間には余裕があって、細かいことは医療者にお任せしたいという方です
腹膜透析が向いているひとは、
几帳面な性格で、ご自身の現在の時間を大切にされたい方です
(生体)腎移植が向いているひとは、
几帳面かつ腎臓以外の問題がほとんどなくて、ご家族の理解がある方です
言葉の解説をします
血液透析とは、
- 週3回・1回3~5時間かけて、
- クリニックで血液を取り出して浄化(きれいに)する治療です
- 事前の準備として血液透析開始の2~4週前に血管の手術が必要です
血液透析のメリットは、
・クリニックに来院すれば細かいことは医療従事者にお任せにできる
・比較的長期(長いと数十年)継続できる
ことです
血液透析のデメリットは、
・針を刺す回数が多い
・シャント(手術した血管)が詰まると、入院が必要
なことと、
腎臓のすべての機能を肩代わりできないので、
・血管への負担が多い
・食事や水分への制限が多い
・通院回数が多いので社会活動が制限される
ことです
腹膜透析とは、
- 1日2~4回自宅でおなかの中に1.5~2Lの透析液を入れて、
- 腹膜を使って血液を浄化する治療です
- 事前の準備として腹膜透析用のカテーテル(チューブ)をおなかに埋め込む手術が必要です
腹膜透析のメリットは、
腎臓のすべての機能を肩代わりできないものの、
・血管への負担が少ない
・食事や水分への制限が少ない
・通院回数が少ないので社会活動がしやすい
・針を刺す回数が少ない
ことです
腹膜透析のデメリットは、
・腹膜透析を実施している施設が少ない
・末期腎不全(ESKD)の一番の原因である、糖尿病との相性が悪い (高血糖を起こしやすい)
・長期(おおよそ5~10年以上)で、続けられるケースが少ない
・衛生的に不注意があると、腹膜炎(感染症)をおこしうる
・被嚢性腹膜硬化症をおこすと、消化管の不調のために手術が必要な場合がある
ことです
被嚢性腹膜硬化症とは、(読み飛ばしてOKです)
- 腹膜透析をしている方の、0.9~2.4%に生じる合併症で、
- 長期間腹膜透析をしている方を中心に、
- 腹膜が分厚くて硬い組織(線維化)に置き換わる病気です
- 腸閉塞(便通なくなり嘔吐する)と似た症状が見られます
- 日本では手術で回復可能なケースがありますが、原則腹膜透析は中止になります
腎移植とは、
他の人の腎臓を移植することで腎臓の果たしていた機能を回復する方法です
- 献腎移植
- 生体腎移植
の2種類があります
献腎移植とは、
- 亡くなった方ないし脳死と判定された臓器提供者の方から、腎臓を譲り受ける方法です
- 平均の待ち時間は15年と極めて長いので、健康管理と強運が必要です
- 多くの方が移植までの心血管などのトラブルのために、残念ながら亡くなってしまいます
- 手術前に十分な準備ができないので、手術のリスクは(生体腎移植より)高くなりがちです
生体腎移植
- 親族や配偶者から腎臓を譲り受ける方法です
- 事前に十分な準備や計画が可能なので、非常に理想的な条件で移植を受けることが可能です
- 健康なドナーの方のご負担が大きいのが、一番の問題です
腎移植のメリットは、
腎臓のすべての機能を取り戻せるので、
・血管への負担が少なく
・食事や水分への制限が少なく
・通院回数が少ないので社会活動がしやすい
ことです
腎移植のデメリットは、
・腎臓の提供を受けることが極めて難しく、
・腎移植後には拒絶反応を抑えるために免疫抑制薬の内服が必要
なことです
まとめ:
さて、腎臓が役割を終えたときにどういう選択肢があるのか、というお話を今日はしました。事前に準備すればご本人とご家族が納得いく治療を正しいタイミングで始められる可能性が高いはずです。是非かかりつけの腎臓内科のチームの皆さんと早めにご相談の機会をもうけてください。是非コンテンツを健康長寿にお役立てください!
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