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内科医の3Dナカノです。今日は慢性腎臓病がある場合に、カルシウム(Ca)とリン(P)にご注意を、というお話です
[慢性腎臓病CKDのお話の一覧]
腎臓病の診断と意義: 尿検査の解釈・慢性腎臓病の診断・重要性
腎臓病の注意点: 食事の注意点・生活の注意点
腎臓病の治療一般論: 血圧の治療・貧血の治療・カルシウム・リン ←この記事
腎臓病の個別の治療: 腎臓が悪くなる特別な原因がある場合
腎代替療法: なぜ必要か・賢い選び方
本日の結論:
慢性腎臓病(CKD)のG3a(GFR 60未満)からで骨・ミネラル代謝異常(MBD)が始まります
血清カルシウム(Ca)が低下・血清リン(P)が上昇し、骨が弱くなって動脈硬化が進む状態です
補正カルシウムは8.4~10.0mg/dL、リンは2.5~4.5mg/dLが目標値です
初手はカルシウム製剤や活性型ビタミンDで治療するのが一般的です
KDIGOのガイドライン2012や日本腎臓学会のCKDガイド2012・ガイドライン2018などを参考に、日本人向けに内科医3Dナカノが総合的に慢性腎臓病(CKD)の解説をしていきます
言葉の解説をします
骨・ミネラル代謝異常(CKD-MBD)とは、
CKDがある人の体の中で
- 血清カルシウム(Ca)が低下
- 血清リン(P)が上昇し、
- 骨が弱くなって、
- 動脈硬化及びそれに伴う死亡率が高くなる
状態です
CKD G3a(GFR 60以下)から始まるとされます。MBDはMineral & Bone Disorderの略です
仕組みは以下の通りです (が、理解できなくて大丈夫です)
腎臓の不調でP排泄とビタミンDが活性化できない
→腸管でのCa吸収が悪くなる
→Caを増やすために副甲状腺ホルモン(PTH)が分泌される
→PTHが骨を溶かしてCa・Pが血中に増える・骨粗鬆症が進行する
→Pが過剰でCaとPが血中に溶けきれなくなる
→血管の壁にリン酸カルシウム結晶がたまる(異所性石灰化)
→動脈硬化の進行で死亡率が上昇する
FGF23などの詳細を無視した乱暴な説明なので正確には成書・新しい文献をご参照ください
理想的なカルシウム(Ca)とリン(P)の値は、
- 補正カルシウム:8.4~10.0mg/dL
- リン:2.5~4.5mg/dL
とされています
補正カルシウム(Ca)濃度とは、
アルブミンという血中の蛋白質に結合しているCaを補正する方法です。アルブミンが正常より低い(4g/dL未満)の場合に限り、以下の計算式を使って正しい(補正)Ca濃度を求めます
補正Ca = 実測Ca + ( 4 ー 血清アルブミン )
四の五の言うより計算の例を見た方が分かりやすいと思います。以下をご参照ください
アルブミン | 実測Ca | 補正Ca | Caの判定 |
(g/dL) | (mg/dL) | (mg/dL) | |
4.5 | 8 | 8 | 低Ca |
4 | 8 | 8 | 低Ca |
3.5 | 8 | 8.5 | 正常 |
1 | 8 | 11 | 高Ca |
食事の上でのオススメは、
- カルシウムの補充は、お薬を使うことをオススメします
- 余分なリンを摂取しないために食品添加物を避けるのがよいです
カルシウムの補充は、お薬を使うことをオススメする理由は、小魚などで摂ろうとすると余分なリンを摂取することになるためです。余分なリンを摂取しないために、食品添加物・加工食品・ファーストフード・清涼飲料水を可能な限り避けることが、CKDガイド2012では推奨されています。詳細については栄養士による栄養指導をお願いするのが、ご自身の生活にぴったりの方策を見つけるコツだと思います
CKD-MBDの治療薬は、
初手はカルシウムや活性型ビタミンDなどが使われていますが、状況次第なので詳細は主治医の先生にお任せください
もしお薬の調整方法に興味が有るようでしたら[P,Ca の治療管理法『9 分割図』]で検索してみてください。日本透析医学会のガイドラインは便利で、腎臓内科医として勤務していたときにはいつも参考にしていました
まとめ:
さて、慢性腎臓病のときにみられやすいカルシウム・リンの問題(CKD-MBD)についてお話しました。比較的簡単に治療できるのに、結果は骨が弱くなったり動脈硬化が進むことになる困った病態です。是非コンテンツを健康長寿にお役立てください!
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