内科医の3Dナカノです。今日は慢性腎臓病(CKD)と貧血というお話です
[慢性腎臓病CKDのお話の一覧]
腎臓病の診断と意義: 尿検査の解釈・慢性腎臓病の診断・重要性
腎臓病の注意点: 食事の注意点・生活の注意点
腎臓病の治療一般論: 血圧の治療・貧血の治療 ←この記事・カルシウム・リン
腎臓病の個別の治療: 腎臓が悪くなる特別な原因がある場合
腎代替療法: なぜ必要か・賢い選び方
本日の結論:
慢性腎臓病(CKD)のひとの貧血の治療目標はヘモグロビン10~12g/dLです
貧血が悪いと腎臓の寿命・心血管によくない事がわかっています
鉄・ビタミンB12・葉酸が不足している場合は補充をします
腎臓が作る造血物質(エリスロポエチン)が足りない場合は注射で補充します
KDIGOのガイドライン2012や日本腎臓学会のCKDガイド2012・ガイドライン2018などを参考に、日本人向けに内科医3Dナカノが総合的に慢性腎臓病(CKD)の解説をしていきます
言葉の解説をします
貧血とは、
赤血球の指標が低くなる状態で
- 女性で:ヘモグロビン12g/dL未満
- 男性で:ヘモグロビン13g/dL未満
を一つの指標としています
赤血球とは、
体中に酸素を運んでいる赤い細胞で、細胞の中にはヘモグロビン(Hb)と言われる鉄を含む赤色の色素を持っています
一般的な貧血の原因は極めて多様で、(読み飛ばし推奨)
・栄養の問題:鉄・ビタミンB12・葉酸・銅欠乏など
・遺伝性疾患:球状赤血球症・サラセミアなど
・血液疾患:白血病・骨髄異形成症候群など
・慢性的な出血:消化器・婦人科の潰瘍・がん・ポリープ・筋腫など
・内分泌疾患:甲状腺機能亢進症・副腎不全など
・臓器障害:腎不全・肝不全・脾腫・心臓弁膜症など
・慢性炎症:膠原病・血管炎症候群など
・中毒:薬剤性・重金属・蛇毒など
ご覧のように極めて多岐にわたります (一つひとつ読まなくて大丈夫です)
慢性腎臓病(CKD)で貧血があると、
慢性腎臓病(CKD)で貧血があると、
- 腎臓の寿命が短くなること
- 心血管疾患(CKD)の悪化のリスクとなること
が知られており、貧血の治療をすることで腎臓・心血管の病気も改善すると理解されています
心血管の病気については以下で解説していますのでご覧ください
腎臓が悪い場合(GFR 60未満)の貧血の原因は、
- 鉄・ビタミンB12・葉酸欠乏 (食事制限の影響もあり)
- エリスロポエチン不足 (腎臓で作っている造血物質)
- 尿毒症 (腎臓が悪くて老廃物の排泄がうまくいかない)
など比較的限られています
鉄・ビタミンB12・葉酸欠乏が不足している場合、
内服薬で比較的容易に改善します
鉄:フェロミア®, フェロ・グラデュメット®, フェルム®などを内服します
通常血清フェリチン値100ng/mLになるまで内服を継続します
貧血が改善した段階で内服をやめるとすぐ貧血がぶり返します
ビタミンB12:メチコバール®(メコバラミン)などを内服します
葉酸:フォリアミン®を内服します
エリスロポエチン(腎臓由来の造血物質)不足の場合は、
通常腎臓内科の先生の判断でヘモグロビンが10~12g/dLになるように注射薬の調整が行われます
尿毒症の場合は、
直接できることはほとんどありません
腎臓が悪くて老廃物の排泄がうまくいかないと、赤血球が効率よく作れなかったり・赤血球寿命が短縮するために貧血になります。腎臓の働き自体を劇的によくすることは通常できません。腎代替療法(血液透析・腹膜透析・腎移植)を始めたタイミングで、貧血が改善するのがよくみられます
球形吸着炭の活性炭製剤にクレメジン®があります。尿毒症によるだるさが改善されたと報告はされているものの、炭の粒を内服するのはやや困難です。また、便秘や他の薬効成分を無効化するなどの副作用があります。貧血への効果はまだ不明です
貧血の検査は、
- G3a-3b(GFR 30~60)で:最低年1回の貧血検査
- G4(GFR 30未満)で: 最低年2回の貧血検査
がKDIGOのガイドライン2012で推奨されています
まとめ:
腎臓が悪い場合の貧血の理由と、その治療法とその意義についてまとめました。腎臓はなるべく悪くなる前に生活習慣・血圧の調整などで予防することが重要です。でも、もし貧血になってしまったら益々腎臓が悪くなるので、しっかり治療を受けてください。是非コンテンツを健康長寿にお役立てください!
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