喫煙している場合は行動療法と薬物療法[USPSTF2021]

禁煙のすゝめ

内科医の3Dナカノです。今日はUSPSTFから2021年1月に推奨が出た、喫煙している場合は行動療法と薬物療法などの助けを借りて禁煙を頑張りましょうというお話です

USPSTFについてはこちらをご覧ください

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目次

本日の結論:

喫煙は日本の三大死因(がん・心疾患・脳卒中)すべてのリスクを高めます
煙草を吸う習慣は、日々意図せぬ健康被害を生み出しています
行動療法・薬物療法を上手に利用して禁煙につとめましょう

結論のもとになったUSPSTF推奨:

成人の喫煙者をみたら、

行動療法と薬物療法(非妊婦に限る)を提供する(推奨度A)

電子タバコを使った禁煙は情報不足なので効果と安全性の分かっている従来法を推奨する(推奨度I)

USPSTF

言葉の解説をします

煙草が体に与える悪影響は、

動脈硬化心血管疾患や脳卒中が増加します
発がん:肺や煙の通り道だけでなく全身の臓器のがんが増えます
肺気腫:肺の構造が壊れて酸素ボンベを常時持ち歩くことになります
 火事になってしまうので酸素を吸っているひとはもう煙草は吸えません
・リウマチ:一部の関節リウマチは煙草や歯周病が原因であると分かっています
など数多くあります

行動療法とは、

カウンセリング(行動療法)のうち日本で現在行われているものは、
医師による禁煙外来・遠隔(オンライン)診療での禁煙外来・スマホアプリ(CureApp SC®)などの種類があります。対面と遠隔診療のどちらかが有効性が高いかどうかはまだ結論が出ていません

CureApp SC®は自分で触れたことはありませんが、日本で初めて医療機器として承認された治療用アプリです。煙草の不完全燃焼に伴う一酸化炭素を検出する計器が付随しているので、客観的な治療効果が分かってモチベーションの維持に良さそうだと思いました

薬物療法とは、

  • ニコチン補充療法:ニコレット®・ニコチネル®・ニコチネルTTS®
  • バレニクリン:チャンピックス®
  • (ブプロピオン徐放:日本未発売)

などです

ニコレット®とニコチネル®は市販のガム製剤です

ニコチネルTTS®は、

1日1回貼り換えて皮膚から吸収するタイプの処方薬です。ニコチンを補充してイライラを軽減しながら、タールなどの有害物質を断つことが出来ます。欠点はうっかり誘惑に負けて煙草を吸ってしまった時に、ある程度煙草を美味しく感じることです

チャンピックス®は、

ニコチンが刺激する先のニコチンレセプターを無効化したうえで、軽微に神経細胞を刺激することでイライラ感を軽減するの作用もある処方薬です。仮に煙草を吸ってしまっても美味しくないとされています
主な欠点は消化器症状と不眠です。かつては心血管疾患(CVD)の増加や、運転するひとは服用してはいけないといわれた時代もありました。その後の検証で疑いは晴れてアメリカでは使われているようです

チャンピックス®の見本

お子さんが生まれたというのは、

比較的よくある禁煙の動機です。主に子供と暮らす喫煙者のために自治体から禁煙外来・治療の助成が受けられる場合がありますのでご検討ください 日本禁煙学会


それではいくつかQ&Aを、

「ストレスが溜まると吸ってしまうのはなぜ?」

煙草を吸う人も吸わないひともストレスはあります。煙草を吸うひとはそれに加えてストレス作業中に煙草を吸えないイライラが追加されているので、喫煙でストレスが解消されたと感じてしまうのです。実際に解消されたのはタバコを吸えないイライラ(身体的依存)です

「朝一の時間・信号待ち・休憩時間での一服が美味しいのはなぜ?」

その前にニコチンが摂れない時間が多いからです
ニコチン依存症にかかるとニコチンが足りなくなるとイライラして集中力がなくなります(身体的依存)。本来の力が出せなくてモヤモヤしているところに、ニコチンが効くので依存しやすい状況になります
ニコチンの依存には身体的依存心理的依存とがあって、身体的依存(頭痛・イライラ・集中力低下)は完全に煙草をやめてから2週間程度でなくなるとされています。ただ、心理的な喪失感の克服にはご自身で煙草をやめたいという強い意志が不可欠です

最後にナカノの担当させていただいた患者さんから聞いたお話をシェアさせてください

禁煙してよかったことはなんですか?

お小遣いが貯まりました
→仮に1箱@600円で毎日1箱1年間吸うと、毎年219,000円です。完全にひと財産です

禁煙して困ったことはなんですか?

「食べ物がおいしく感じるようになって体重が増えました
→味覚の回復によるものです。煙草を吸っていて標準体重と、禁煙に成功していてちょっとぽっちゃりでいえば、依存症を克服している分禁煙したひとは、今後とも健康的な生活を送れる可能性が高いとナカノは考えます

禁煙のお話はいかがでしたでしょうか?

煙草を止める理由はたくさんあるものの、依存性は相当に高く、誘惑を断ち切るのは容易ではないはずです。行動学的な側面への理解と、更に薬物療法を使うと成功率が更に上げられるかもしれません。助成や禁煙外来など上手に使って禁煙してみることをオススメします!

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この記事を書いた人

卒後15〜20年の病院内科医のナカノです。資格は医師・総合内科専門医・リウマチ専門医・アレルギー専門医(内科)・博士(医学)です。現在はアメリカのワシントンDC郊外の研究所で研究者として働いてます。
暮らしに役立つ知恵や皆さんの健康に寄与する情報を発信していければと考えています。

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