光信号の電気信号への変換するための、PMTやAPDでのデータ収集について詳細に解説します。原則、臨床検査技師の方・血液内科医師・医生物学的な研究をする研究者を、想定聴衆として書きます。皆様に役に立つ内容ではないものの、日本語での情報は不十分だと感じてます。今後の日本発のサイトメトリーの臨床・研究のスタンダードが上がることを祈念しながら、医学者ナカノが解説していきます
本日の結論:
- サイトメーターはPMTかAPDをつかって光子をデジタルデータに変えています
- Area/Height/Widthのパラメーターを使うとダブレットが検出できます
- ダブレットは2つ以上の細胞がくっついたもので、ノイズの元になります
- Area/Height/WidthをFScとSScで測定してダブレットは除去しましょう
PMTは光電子増幅管で、
- 光子を電子に変換して増幅する装置です
- Voltageを増やすと陽性荷電が増えて電子の増幅効率が上がります
- サイトメーターのデジタルデータを作るのに一役買っています
わずかに検出された光子を増やして、電気信号・データに変換する仕組みです。大きいスケールのPMTがカミオカンデなどニュートリノを検出する実験場で使われています。最近のサイトメーターでは同時に検出できる蛍光色素の数分だけということで、8~30個程度が搭載されています。
Voltageを増加させるとPMTでの光子・電子の増加効率が大きくなります。Voltageが大きすぎるチャンネルと小さすぎるチャンネルがあるとコンペンセーションのバランスが崩れてデータの解析が難しくなる場合があるので極端な値は数値にならないように調整するのがオススメです
APDはアバランチフォトダイオードで、
- 最新のスペクトラルサイトメーターで大量に使われる検出素子です
Spectral cytometerといわれるサイトメーターで使われている、光子を増やしてデジタル信号に変換する装置です。フィルターを使ってピークの波長を分取してPMTで観測するのではなく、全レーザーの全部のEmissionの光のパターンを分析します。全部で64チャンネル観測しないといけないので、PMTで観測すると巨額になってしまいます。2017年に安価なAPDに支えられて最初のスペクトラルサイトメーターとなったCytek Auroraが発売されました
ダブレットの除去とは、
- 二つ以上の細胞がくっついたものを、解析対象外にする目的で行います
- FSc-AやSSc-AのほかにFSc-W・FSc-H・SSc-W・SSc-Hを測定する必要があります
ダブレットの除去が出来ないと困るのは例えば、
- CD4+細胞とCD8+細胞がくっついているのをdouble positiveだと誤認する
- GFP+細胞が複数つながって、GFP強陽性の細胞だと誤認する
- ソーティングして単一クローンを取ったつもりが2つ混在する
などがあります
ここで末尾のA, H, Wは、
Area, Hight, Widthの略で、面積・高さ・横幅を意味します
レーザー光に細胞が進入すると最初は弱い蛍光から次第に蛍光強度が強くなります。細胞全部がレーザー光の照射を受けている状態でピークを迎えて、レーザー光から出ると信号が検出されなくなります。この様子はちょうど放物線のように描かれます(下図)
- この放物線の横の長さがWidthで、細胞が通過した時間を示す指標です
- この放物線の縦の長さがHeightで、細胞が出した最大の蛍光強度を示す指標です
- この放物線の面積がAreaで、細胞が時系列で出した蛍光強度の総和です
昔のアナログ時代のサイトメーターはHeightしかなかったようです。現代のデジタルサイトメーターではArea, Height, Widthを組み合わせてダブレットの除去を行い、データの解析はAreaを専ら使っています
FScやSScでDoubletの除去をするには、
- A vs H, A vs W, H vs Wの3通りの方法があります
- A vs H, A vs W, H vs Wのどれでやるかは任意です
- FScとSScの両方でDoublet除去をすることが好まれています
まとめ:
さて、本日はサイトメーターでデータをデジタル化する仕組みと、細胞が二つ繋がっているダブレットをどうやって検出しているかを説明しました。Voltageの意味やダブレットの除去などは、駆け出しの頃はよく分からなかったのですが理解しおくことをオススメします。読んでも不明な点は質問をお寄せください。自信を持って正しい結果を出せるように頑張っていきましょう!
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