腎臓が悪くなる原因がある場合は元の病気を治そう [慢性腎臓病CKD]

慢性腎臓病CKD

内科医の3Dナカノです。今日は腎臓が悪くなる病気がある場合は元を絶とう、というお話です

[慢性腎臓病CKDのお話の一覧]
腎臓病の診断と意義: 尿検査の解釈慢性腎臓病の診断重要性
腎臓病の注意点:   食事の注意点生活の注意点
腎臓病の治療一般論: 血圧の治療貧血の治療カルシウム・リン
腎臓病の個別の治療: 腎臓が悪くなる特別な原因がある場合 ←この記事
腎代替療法:     なぜ必要か賢い選び方

目次

本日の結論:

慢性腎臓病(CKD)には原因を問わずに効く治療(集学的治療)のほかに
元の病気を治すことが優先の場合があります


腎臓が悪くなる病気は、

  • 腎臓以外の病気が腎臓にダメージを及ぼすもの
  • 腎臓自体の病気
  • 遺伝性の病気

に分けられます

腎臓以外の病気が腎臓にダメージを及ぼすものは、

  • 糖尿病性腎症
  • 膜性腎症
  • 膠原病(全身性エリテマトーデス・血管炎など)
  • 高血圧(腎硬化症)
  • 腎動脈狭窄

などです

糖尿病性腎症

  • 一番よくみられる慢性腎臓病(CKD)・末期腎不全(ESRD)の原因です
  • 初期は尿蛋白定量では捉えられないので、微量アルブミン尿の検査をします

通常原因が明らかなので、腎臓の生検(針で刺して腎臓の組織を取る)検査はしません。潜血は通常陽性にならないので、潜血が陽性の場合は精密検査をする場合があります。治療は糖尿病の治療をしっかりして、ACEi/ARB(アンジオテンシン変換酵素阻害薬・アンジオテンシンII受容体拮抗薬)を適切に調整することが大切です。詳細は次の記事をご覧ください

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膜性腎症

  • 腎臓のフィルター(糸球体)の膜が厚くなって、蛋白が漏れる病気です
  • 原因は多様なものが知られていて、

薬:痛み止め(NSAID)・リウマチの治療薬
糖尿病・甲状腺炎
感染症:B型肝炎・C型肝炎・梅毒
膠原病:全身性エリテマトーデス・IgG4関連疾患
悪性腫瘍:前立腺がん・肺がん・乳がん・膀胱がん・消化管がん・血液がん

などです。薬が原因である可能性があれば薬をやめたり、もとの病気を治療することが通常では優先度が高いです

膠原病

  • 腎臓に炎症(糸球体腎炎)をおこしたり、
  • 腎臓の血流に問題が出たりします

全身性エリテマトーデスや血管炎症候群(顕微鏡的多発血管炎・肉芽腫性多発血管炎・好酸球性多発血管炎性肉芽腫症・結節性多発動脈炎)などが大元の病気の名前です。もとの病気次第で、様々な臓器に炎症によるトラブルが起きるので免疫を抑える薬(ステロイド・シクロフォスファミド・アザチオプリン・メトトレキサートなど)で治療が行われてきました。近年リツキシマブなどの分子標的薬(体の中でピンポイントミサイル爆撃)が使えるようになりました

高血圧(腎硬化症)

血圧が高い状況が持続するとフィルターの役割をしている腎臓にダメージが蓄積します
血圧が高いとレニン・アンジオテンシン系というシステムが働いて益々血圧が高くなるという悪循環に陥ることが知られています。レニン・アンジオテンシン系を抑える治療(ACEi/ARB)が非常に重要です
レニン・アンジオテンシン系はCKDの治療全般に重要なので下の記事をご覧ください

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腎動脈狭窄

  • 腎動脈は腎臓に血液を送っている血管で、
  • 心血管疾患(動脈硬化や大動脈の病気)などで、管腔が狭くなる場合があります

腎動脈が狭くなると血流が悪くなった腎臓がレニン・アンジオテンシン系というシステムを活性化して益々血圧が高くなります。診断は腹部ドップラー超音波・CT・MRIなどの検査方法が使われますが、どれも一長一短です。数週~数ヶ月で悪化する高血圧・降圧薬の効きが異常に悪いなど、非常に腎動脈狭窄が疑わしい状況の場合に検査をします。治療は腎動脈をカテーテルで広げる治療や、腹部大動脈瘤が問題ならそちらを修復する方法などがおこなわれています。腹部大動脈瘤の記事は以下をご覧ください

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薬剤性腎障害

痛み止め(NSAID)・抗菌薬・抗真菌薬(カビを退治する)・抗ウイルス薬・抗がん剤・降圧薬(ACEi/ARB)などが主な薬剤です。通常中止・減量・薬剤変更などで対処します

腎臓自体の病気

  • IgA腎症
  • 微小変化型ネフローゼ症候群
  • 膜性増殖性糸球体腎炎

などです

IgA腎症

  • 免疫グロブリンAという粘膜で主に働いている体の防護機構が、
  • あやまって腎臓を攻撃する病気です

東アジアで多い病気です。尿所見が芳しくない場合はステロイドや免疫抑制剤が使用されます。日本から扁桃腺を手術で摘出してステロイド大量(パルス)療法をする治療が有効であるという報告がされていますが、まだ欧米では受け入れられていないようです

微小変化型ネフローゼ症候群

  • 主にアジア人の小児で発症しやすい、ネフローゼ症候群(蛋白が尿に漏れる病気)です
  • 腎臓の病理が正常に近いので微小変化型と呼ばれます

治療には主にステロイドが使われ、ステロイドの効きが悪い場合免疫を抑える薬(免疫抑制剤)が追加されます

膜性増殖性糸球体腎炎

  • 特徴的な腎臓の病理組織像から名前がついた病気です

原因は補体や免疫グロブリンなど、本来病原体から体を守るためのシステムの異常が主体と考えられています。免疫を抑える薬などが使われますが、徐々に進行して末期腎不全を来す場合が多いとされています

遺伝性の病気

  • ファブリー病
  • 多発性嚢胞腎

ファブリー病

ライソゾームという細胞のゴミを処理する部分の機能が悪いことで起きる病気です
腎臓だけでなく、心臓・脳血管・皮膚・胃腸・眼などの様々な臓器に問題がおきます
酵素補充療法・シャペロン療法などで治療ができるようになりつつあります

多発性嚢胞腎

  • 腎臓に袋状の病変(嚢胞)がたくさんできて、腎臓の働きが悪くなる病気です
  • 日本に約3万人の患者さんが報告されています

遺伝様式が異なる病気が混在していて、ESKDのリスクもひとによります
2010年から使えるようになった利尿剤のサムスカ®が高リスクの場合使われています

まとめ:

さて、慢性腎臓病(CKD)に明らかな原因がある場合は、そちらの治療を優先しましょうというお話でした。12の別の内容を手短に扱ったので若干散漫になったかもしれません。是非コンテンツを健康長寿にお役立てください!

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この記事を書いた人

卒後15〜20年の病院内科医のナカノです。資格は医師・総合内科専門医・リウマチ専門医・アレルギー専門医(内科)・博士(医学)です。現在はアメリカのワシントンDC郊外の研究所で研究者として働いてます。
暮らしに役立つ知恵や皆さんの健康に寄与する情報を発信していければと考えています。

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