慢性腎臓病と血圧の治療 [慢性腎臓病CKD]

CKD-高血圧

内科医の3Dナカノです。今日は慢性腎臓病(CKD)がある場合に、血圧をどう考えてどう治療するのかというお話です

[慢性腎臓病CKDのお話の一覧]
腎臓病の診断と意義: 尿検査の解釈慢性腎臓病の診断重要性
腎臓病の注意点:   食事の注意点生活の注意点
腎臓病の治療一般論: 血圧の治療 ←この記事貧血の治療カルシウム・リン
腎臓病の個別の治療: 腎臓が悪くなる特別な原因がある場合
腎代替療法:     なぜ必要か賢い選び方

目次

本日の結論:

糖尿病合併慢性腎臓病(CKD)軽度以上の蛋白尿のあるCKDは、ACEi/ARB*を使用します
ACEi/ARBを使用中はeGFR, カリウム(K)を定期的に検査して、
過剰な低血圧(110mmHg未満)・eGFR低下(30%以上)・血清K上昇(5.5mEq/L以上)の場合ACEi/ARBは減量か中止が必要です
*ACEi:アンジオテンシン変換酵素阻害薬 *ARB:アンジオテンシンII受容体拮抗薬
血圧の目標は、

75歳未満75歳以上
糖尿病(-)蛋白尿(-)
蛋白尿(+)
140/90
130/80
150/90
糖尿病(+)130/80150/90
糖尿病・蛋白尿の有無と年齢による血圧目標

KDIGOのガイドライン2012や日本腎臓学会のCKDガイド2012ガイドライン2018などを参考に、日本人向けに内科医3Dナカノが総合的に慢性腎臓病(CKD)の解説をしていきます


言葉の解説をします

血圧が慢性腎臓病(CKD)で大事なのは、

血圧が高いとレニン・アンジオテンシン系(RAS)というシステムが働いて、益々血圧が高くなるという悪循環に陥ることが知られています

RASを抑えると、

CKDの進行を抑えて、末期腎不全(ESKD)へ進行することと、
心血管疾患(CVD)の発症も抑制することができる、
ということが知られています

RASを抑えるお薬には、

  • ACEi:アンジオテンシン変換酵素阻害薬
  • ARB:アンジオテンシンII受容体拮抗薬

の主に2種類が知られています

ACEi:アンジオテンシン変換酵素阻害薬は、

・カプトリル® (カプトプリル)
・レニベース® (エナラプリル)
・ゼストリル® (リシノプリル)
・コバシル® (ペリンドプリル)
・エースコール® (テモカプリル)
・タナトリル® (イミダプリル)
・セタプリル® (アラセプリル)
・アデカット®

などが日本で使われています (カッコ内は後発(ジェネリック)医薬品)

ARB:アンジオテンシンII受容体拮抗薬は、

・ニューロタン® (ロサルタン)
・ディオバン® (バルサルタン)
・アバプロ® (イルベサルタン)
・ブロプレス® (カンデサルタン)
・ミカルディス® (テルミサルタン)
・オルメテック® (オルメサルタン)
・アジルバ®

などが日本で使われています (カッコ内は後発(ジェネリック)医薬品)

ACEi/ARBの副作用は、

  • 血圧が下がりすぎる
  • 腎臓の血流が悪くなってeGFRが低下する
  • 高カリウム血症からの不整脈
  • (ACEiのみ) 空咳

などがあります
使いすぎると血圧が下がったり腎臓が逆に悪くなったりということがありえます。カリウムは腎臓から排泄されるミネラルで、ACEi/ARBの使用で排泄に支障をきたす場合があります。高カリウム血症は不整脈の原因になり、ひどい場合には心臓が止まってしまうこともありえます。5.5 mEq/L以上は一般的には許容されません。ACEiだけの副作用としては、空咳が知られています。咳き込みが耐え難い場合には、ACEiからARBに変更する場合があります

慢性腎臓病(CKD)の降圧目標は、

75歳未満75歳以上
糖尿病(-)蛋白尿(-)
蛋白尿(+)
140/90
130/80
150/90
糖尿病(+)130/80150/90
糖尿病・蛋白尿の有無と年齢による血圧目標

と最新のCKD診療ガイドライン2018で記載されています
収縮期血圧が110mmHg未満になったら降圧しすぎと判断されます。降圧薬の減量または中止が必要になりますので担当の先生にご相談ください
血圧の正しい測定方法は以前に解説しているのでそちらをご覧ください

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蛋白尿も、糖尿病もない場合は、

ご本人の病態次第で降圧薬が選択できるとされています

  • 本当に何も問題がなければ:長時間作用型のカルシウム拮抗薬が安価で降圧作用が強力です
  • 腎臓・肝臓・心臓などの問題で浮腫むくみがある場合に:利尿薬を使う場合があります
  • 冠動脈疾患・心不全などがある場合:β遮断薬やミネラルコルチコイド受容体拮抗薬(心不全のみ)

が推奨されています(CKDガイドライン2018)
このあたりはかなり個別の状況次第なので主治医の先生とご相談ください

カルシウム拮抗薬は以前、痛風の治療目標の記事で取り上げましたのでご覧ください

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高血圧とCKDが両方ある場合の食事・生活習慣は、

  • 減塩:3~6g/日
  • 減量:BMI 25未満
  • 運動:有酸素運動30分
  • 節酒:男性で20~30mL/日(16~24g/日)、女性で10~20mg/日(8~16g/日)
  • 禁煙

がCKDガイド2012で推奨されています。CKD単独の食事・生活推奨とほぼ一致しています
CKDの食事生活習慣は、以前に以下の記事で取り上げましたのでご覧ください

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まとめ:

さて、今日の血圧の薬の選び方とその副作用のお話はいかがだったでしょうか。腎臓が悪くなった時は、血圧や採血結果を見ながらACEi/ARBを細やかに調整するのが肝心です。血圧手帳をしっかりつけて、是非コンテンツを健康長寿にお役立てください!

[慢性腎臓病CKDのお話の一覧]
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腎代替療法:     なぜ必要か賢い選び方

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この記事を書いた人

卒後15〜20年の病院内科医のナカノです。資格は医師・総合内科専門医・リウマチ専門医・アレルギー専門医(内科)・博士(医学)です。現在はアメリカのワシントンDC郊外の研究所で研究者として働いてます。
暮らしに役立つ知恵や皆さんの健康に寄与する情報を発信していければと考えています。

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