大腸がん検診―45~75歳の成人で[USPSTF2021]

大腸がん検診

内科医の3Dナカノです。今日はUSPSTFから2021年5月に推奨が出た、45~75歳のあいだは大腸がん検診をしましょうというお話です

USPSTFのグレードについてはこちらをご覧ください。当Blogの健康診断のまとめは以下をご覧下さい

あわせて読みたい
健康診断推奨 当Blogの米国の健康診断推奨USPSTFを、日本人向けに解説を加えてまとめた記事です詳細はリンク先をご覧になってください USPSTFの概要については、以下で解説しています...
目次

本日の結論:

残念ながら明らかな出血で見つかった大腸がんは、手遅れの場合が多いです
40歳以降に市町村から送られてくる大腸がん検診の検便検査を定期的に受けて、正しく対処してください!

結論のもとになったUSPSTF推奨は次のとおりです

50~75歳の成人で大腸がん検診をおこなう(推奨度A)

45~49歳の成人で大腸がん検診をおこなう(推奨度B)

USPSTF

言葉の解説をします

大腸がんのスクリーニングは、

いろいろな方法があって

  1. 自宅や職場で便を採取するもの
  2. 便を出し切らないとできないもの
  3. 鎮静や麻酔の上で腸を直接内視鏡で観察するもの

などご本人の好みによって選んでもらっています

スクリーニングの検査とは、

方法頻度
便の免疫化学検査(FIT)1~3年毎
CTコロノグラフィー5年毎
S状結腸内視鏡5年毎
S状結腸内視鏡10年毎 + FIT毎年
全結腸(大腸)内視鏡10年毎
大腸の検査の一覧とその推奨される頻度

内容を順番に見ていきましょう!

便の免疫化学検査(FIT)とは、

便の中に含まれるヒトのヘモグロビンを検出するキットです

ヘモグロビンは酸素を運ぶ血液の赤い成分です。昔の便潜血検査は赤身肉を食べすぎると陽性になったりしたものですが、それよりはかなり性能が向上しています。ただし残念ながら、痔で出血しているのかポリープや大腸がんで出血しているのかは区別ができません
早期がんを見逃すことがないようにするために、通常は陽性になったら結果的に痔が原因だろうと、大腸内視鏡を受けるようオススメされると思います

CTコロノグラフィーとは、

CTスキャンで腫瘍やポリープの3D画像を作る検査です

剤を飲んで全部の便を出したあと、肛門から空気を入れた状態でCTスキャンを撮る検査です
この検査は内視鏡より若干安全性が高いかもしれない位のメリットしかないので通常ナカノは患者さんにはおすすめしていません。理由は①下剤を飲むのも肛門から空気を入れるのも苦しいし、②CTスキャンなので結構な線量の被爆をするし、③異常があると結局下剤を飲み直して内視鏡検査が必要になるためです

CTコロノグラフィーで発見された直腸腫瘍
Kai Sun, Ruijuan Han, Yang Han, Xuesen Shi, Jiang Hu & Bin lu, Creative Commons Attribution 4.0 International License
Sci Rep 2018;8(1):3790. 

S状結腸内視鏡とは、

大腸の6区分の最後の2か所のみを検査する方法です

大腸は6区分に分かれています:回盲部→上行結腸→横行結腸→下行結腸→S状結腸→直腸
欧米では回盲部の結腸がんが多いので最近はあまり好まれていないようです。日本ではS状結腸・直腸の結腸がんが多いのでよいオプションのように思えます。ただ、実際にはどうせ下剤を飲むことに変わりはないので日本の医療機関ではS状結腸までの内視鏡があまり行われていないようです

全結腸(大腸)内視鏡とは、

便潜血が陽性な場合にナカノがオススメする検査のです

下剤を内服の上、オプションで鎮静や麻酔をして1.5mほどある大腸の全長を内視鏡で観察する検査です。最近の内視鏡は顕微鏡レベルで拡大して血管の走行の乱れなどを観察することが出来るので、ポリープや腫瘍の病理検査をするまでもなく、その場でかなりの精度で良悪性(がんかどうか)の判断ができるようです

大腸内視鏡の様子
Cancer Research UK, CC BY-SA 4.0

ただし、特別な大腸がんのリスクがある場合はこの検査方針が適用できません

特別な大腸がんのリスクとは、

  • これまでの大腸がん・腺腫やポリープ・炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎・クローン病)の既往
  • 本人や家族に遺伝性疾患がある(リンチ症候群・家族性大腸腺腫症など)

のことを指していて、その場合は消化器内科の先生のオススメにしたがって、もう少し頻回に検査が必要になるでしょう

75~85歳の場合は、

ご本人の全身状態・以前のスクリーニングの履歴・ご本人の希望などで検討してもよいことになっています


大腸がんで見た目でわかるほど下血するのはよほどの進行期で、ポリープや初期のがんは便潜血検査をしないと絶対気づかれません。見た目が大丈夫だからOK!とはいかないんですね


まとめ:

大腸がんのスクリーニング検査のお話ですが、いかがだったでしょうか?
ナカノの大腸がんのスクリーニングのオススメは、日本では40歳から対象になっている市町村の便検査を定期的に受けることです。異常があったら大腸内視鏡です
億劫に思う部分はあると思いますが、安く提供してくれている検便検査をしっかり利用して、健康長寿にお役立てください!

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

卒後15〜20年の病院内科医のナカノです。資格は医師・総合内科専門医・リウマチ専門医・アレルギー専門医(内科)・博士(医学)です。現在はアメリカのワシントンDC郊外の研究所で研究者として働いてます。
暮らしに役立つ知恵や皆さんの健康に寄与する情報を発信していければと考えています。

コメント

コメントする

CAPTCHA


目次