痛風の治療目標など [痛風・高尿酸]

尿酸値6以下

内科医の3Dナカノです。今日は痛風の治療目標・ULT開始後のお話を、ヨーロッパリウマチ学会とアメリカリウマチ学会の推奨をもとに解説します。痛風発作・尿酸降下薬の始め方や薬の選び方は別で説明しています。

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本日の結論:

尿酸降下薬(ULT)を使用して血清尿酸値6以下(治療を急ぐなら5以下)を目指しましょう
ULTで痛風発作と痛風結節がなくなっても、再発防止のため血清尿酸値6以下を生涯維持しましょう

2016年ヨーロッパリウマチ学会(EULAR)推奨:

尿酸降下薬(ULT)を開始したら、血清尿酸値 6mg/dL以下を目標にULTを少しずつ増やす

重症痛風の場合(痛風結節・痛風関節症・頻繁な発作)、血清尿酸値 5mg/dL以下にすると治りが早くなる可能性がある

長期的に血清尿酸値 3mg/dL以下を、維持することは推奨しない

血清尿酸値 6mg/dL以下を、生涯維持することを推奨する

EULAR

ループ利尿薬やサイアザイドを使用中に痛風になったら、別の利尿薬へを検討する

高血圧がある場合、ロサルタンかカルシウム拮抗薬への変更を検討する

脂質異常症がある場合、スタチンかフィブラートの開始を検討する

EULAR

2020年のアメリカリウマチ学会(ACR)推奨(案):

ULTと尿酸排泄促進薬で血清尿酸値の目標を達成しない場合や、痛風発作や痛風結節が収まらない場合にはペグロティカーゼに切り替えることを強く推奨する

ACR

言葉の解説をします

血清尿酸値 6mg/dL以下生涯維持するのは、

尿酸降下薬(ULT)の治療完了後、5年で40%のひとが再発することが分かっているためです

ペグロティカーゼとは、

新しい痛風のお薬で尿酸をアラントインという水溶性の物質にかえる作用があります。これと似た酵素は大抵の哺乳類でみられるのですが、何故か人間を含む一部の霊長類だけで欠損している酵素です。他の治療が失敗したり使えない例で推奨されています。お値段は$28000なので日本円で400万円近い超々高額です。日本では発売されていないし、ヨーロッパでも市場から撤退しています

利尿剤には大まかに4種類あって、

  • ループ利尿薬:ラシックス® (フロセミド)
  • サイアザイド:フルイトラン® (トリクロルメチアジド)
  • カリウム保持性:アルダクトン® (スピロノラクトン)
  • 炭酸脱水酵素阻害薬:ダイアモックス® (アセタゾラミド)

が代表的なものです。

下の二つから選ぶことが推奨されていますが、利尿薬は一般的に心不全・腎不全・肝不全など色々な臓器障害がある中で使用するものです。目的と臓器障害の程度によって、医師により適切な選択がされることになると思います

高血圧がある場合、

  • ニューロタン® (ロサルタン)
  • カルシウム拮抗薬

が推奨されています (カッコ内は後発(ジェネリック)医薬品)

[カルシウム拮抗薬一覧]
アダラート®・ペルジピン® (ニフェジピン)
ノルバスク®・アムロジン® (アムロジピン)
コニール® (ベニジピン)
カルブロック® (アゼルニジピン)
カルスロット® (マニジピン)
アテレック® (シルニジピン)
など (かっこ内は後発(ジェネリック)医薬品)

ニューロタン® (ロサルタン)はアンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬(ARB)というカテゴリーの降圧薬(血圧を下げる薬)です。以前から尿酸降下作用があることがしられて推奨に含まれていました。カルシウム拮抗薬は大規模観察研究で痛風との負の関係がみられたので今回追加になりました
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脂質異常症がある場合、

  • スタチン系
  • リピディル® (フェノフィブラート)

が推奨されています (カッコ内は後発(ジェネリック)医薬品名)

リピディル® (フェノフィブラート)は脂質の中でも主に中性脂肪(トリグリセリド)を減らすのに有効とされています。以前の推奨から含まれていました。スタチンは主にLDL(通称悪玉)コレステロールを減らすのに有効とされている薬です。尿酸排泄促進作用があることがわかったので今回の推奨から追加になったようです
スタチンについては以下の記事をご覧下さい

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まとめ:

さて、本日の尿酸降下薬を使った血清尿酸値の目標は6以下(治療を急ぐなら5以下)、というお話はいかがだったでしょうか。再発防止のため血清尿酸値6以下を生涯維持がオススメされています。ペグロティカーゼは最重症の方のために日本でも使えるとよいのですが、今のところそのようなお話は専門家界隈では聞いておりません。痛風を正しく治療して、是非コンテンツを健康長寿にお役立てください!

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この記事を書いた人

卒後15〜20年の病院内科医のナカノです。資格は医師・総合内科専門医・リウマチ専門医・アレルギー専門医(内科)・博士(医学)です。現在はアメリカのワシントンDC郊外の研究所で研究者として働いてます。
暮らしに役立つ知恵や皆さんの健康に寄与する情報を発信していければと考えています。

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