痛風の食事や合併症 [痛風・高尿酸]

痛風

内科医の3Dナカノです。ヨーロッパリウマチ学会(EULAR)2016年の痛風に関する推奨をご紹介します。今日は痛風の一般論(食事や合併症)についてとりあげます

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目次

本日の結論:

痛風は関節やその周囲に尿酸がたまって、炎症(痛風発作)や白い尿酸の塊(痛風結節)をともなう病気です
痛風は治療が可能です
食事・運動習慣を見直して、必要なら減量し、内服薬でコントロールしましょう
心血管疾患(CVD)との関連があるのでCVDのリスクも見直す必要があります

2016年のヨーロッパリウマチ学会(EULAR)推奨:

痛風患者は、痛風の原因・有効な治療の存在・合併症・発作痔の治療の原則・尿酸値の目標に向かって長期間の内服をすること、について情報提供を受けるべき

EULAR

痛風患者に、必要に応じて減量し、アルコール(特にビールと蒸留酒)・砂糖入りの飲み物・大食い(特に肉と魚介)を避け、低脂肪乳・運動を推奨する

EULAR

痛風患者は、腎障害・冠動脈疾患・心不全・脳卒中・末梢動脈疾患・肥満・脂質異常症・高血圧・糖尿病・喫煙などの合併症について全身のスクリーニングを受けるべき

EULAR

以下解説の一部にアメリカリウマチ学会(ACR)2020年推奨(案)も使用しています


言葉の解説をします

痛風とは、

・血中の高尿酸状態が続いて、
・尿酸結晶が関節や皮下組織周囲にたまっていき
・免疫細胞(主に好中球)が尿酸結晶を異物と認識して、
・関節やその周囲に炎症を起こす病気です

ひとによっては免疫細胞が尿酸結晶をまったく敵視しないという場合もあって、その場合は関節の周りを中心に、巨大な白い塊が蓄積していくことになります。この白い塊を痛風結節と呼んでいます。免疫細胞が尿酸結晶を敵とみなすかどうかの仕組みは、まだよく分かっておりません

ナカノが痛風発作を起こしたときの写真・右母趾ぼし(足の親指)の付け根が赤くはれています

尿酸とは、

遺伝情報を媒介するRNAやDNA(アデニン・グアニン)の廃棄物で、
水(≒血液)に溶けにくい性質をもっていて、
ごく少量ずつ腎臓から排泄される性質があります

尿酸が多く含まれるものは、

  • 肉類・魚介類
  • ビール・蒸留酒 (焼酎・泡盛・ウイスキー・ブランデー・ラム・テキーラなど)
  • コーンシロップ・果糖が付加された飲物
  • オレンジ・りんごジュース

です
飲酒についての記事はこちらをご覧ください

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尿酸を下げるとされるものは、

  • コーヒー
  • さくらんぼ
  • スキムミルク・低カロリーヨーグルト

です

減量は高尿酸血症に有効で、

  • 5kgの減量で血清尿酸値が1.1mg/dL下がる

と報告されています

腎臓が悪いと血清尿酸値が上昇することがしられます

また逆に、血清尿酸値が高いと慢性腎臓病の悪化を引き起こす可能性があるとされています。
しかし日本人で中等度に腎臓が悪い(慢性腎臓病 stage3)ひとに、2年間尿酸値を下げる薬を投与しても腎機能の悪化を防がなかったという報告も取り上げられていました。まだ結論は出ていない分野だといえそうです。慢性腎臓病については以下の記事で詳しく解説しています

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痛風を見つけたら心血管疾患(CVD)にも注意

痛風・血清尿酸値が高いことは、
冠動脈疾患(狭心症・心筋梗塞)、心不全脳卒中(脳梗塞・脳出血)、末梢動脈疾患
リスク(独立したリスク因子)になっています
以前にスタチンの推奨の記事で心血管疾患(CVD)について解説しましたので、そちらもご覧になってください

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尿酸結晶が尿管内で析出せきしゅつすると、

  • 尿管結石といわれる石になります

析出とは尿酸濃度が高すぎて溶けきれなくなることです。腎臓と膀胱を結ぶ尿管という管を通るときに激しい痛みを伴ったり、運が悪いと尿管が詰まって腎盂腎炎・敗血症になる事もあり、可能な限り避けたい事態です

尿管結石のイメージ
画像はSERVIER MEDICAL ARTよりCC BY 3.0のライセンスのもと一部改変
Image is created by SERVIER MEDICAL ART and partially modified under CC BY 3.0 license

まとめ:

さて、痛風の一般論についてお話しましたがいかがだったでしょうか。有効な治療の存在・発作時の治療の原則・血清尿酸値の目標などについては順次解説していきます
是非コンテンツを健康長寿にお役立てください!

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この記事を書いた人

卒後15〜20年の病院内科医のナカノです。資格は医師・総合内科専門医・リウマチ専門医・アレルギー専門医(内科)・博士(医学)です。現在はアメリカのワシントンDC郊外の研究所で研究者として働いてます。
暮らしに役立つ知恵や皆さんの健康に寄与する情報を発信していければと考えています。

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