C型肝炎の検査―80歳までの成人 [USPSTF2020]

肝臓・肝炎

内科医の3Dナカノです。今日はUSPSTFから2020年3月に推奨が出た、80歳までの成人でC型肝炎ウイルス(HCV)のスクリーニング検査をしましょうというお話です

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目次

本日の結論:

80歳までの成人で、1回だけC型肝炎ウイルス(HCV)の抗体検査を受けましょう
C型肝炎が見つかったら助成を利用して、治療をオススメします

参考までに、日米のHCV感染者数は、

人数10万人あたり
日本100万人790人
アメリカ240万人730人
日本とアメリカのHCV感染者数

と非常に近いので今回の推奨は日本でも援用できるのではないかと思います

結論のもとになったUSPSTF推奨:

18~79歳の成人で、

C型肝炎のスクリーニング検査をする(推奨度B)

USPSTF

言葉の解説をします

C型肝炎とは、

C型肝炎ウイルス(HCV)に感染して起こる感染症です
HCVは感染すると急性肝炎を発症し、熱やだるさ黄疸などの症状を発症します。70%程度のひとが慢性肝炎に移行して、最終的には肝硬変かんこうへんや肝細胞癌を発症して命にかかわる状態になります

肝硬変とは

肝臓がダメージを受けてその役割を果たさなくなる状態で、進行すると

  • 黄疸:ビリルビンというゴミを排泄できず、全身が黄色くなる
  • 腹水・むくみ:アルブミンという物質が作れず、血管から水が漏れる
  • 肝性脳症:毒素の分解ができず、意識が朦朧もうろうとする

などの症状がみられます
肝移植が受けられない場合、最終的には命にかかわる状態になります

C型肝炎ウイルス(HCV)の感染経路は、

  • 静注薬物乱用
  • 刺青・ピアス
  • 輸血・血液製剤の使用
  • (性交渉・母子感染)

などがあります
HCVに感染した血液が、傷口などから入って肝臓にたどり着くことが必要です。血液で汚染された注射針・刺青の針などを使用することはHCVだけでなく、HIVなど他の感染症を含め大きなリスクです

スクリーニング検査は、

HCV抗体を検査し、陽性だと、PCR(核酸かくさん(DNA)増幅法)による確認検査をおこないます
18歳以下と79歳以上で、過去か現在に静注薬物の使用があれば検査が推奨されています 

スクリーニング検査の頻度は、
通常は1回のみ。静注薬物の使用があれば時々(推奨頻度は不明)

スクリーニング陽性になったら、

  • 消化器内科・肝臓内科・感染症内科などを受診して
  • 感染しているウイルスの特性を調べて、抗ウイルス薬の治療を開始します
  • 助成金のおかげで毎月最大2万円で治療できます

C型肝炎は2014年以降に有効な治療薬が何種類か発売されたので根本治療が可能になりました。それまでは多くの人が肝硬変・肝細胞癌にかかって亡くなっていたので、医学の進歩が著しい分野です。HCVは1989年に発見された、比較的歴史が浅いウイルスです。その発見の功績は、2020年のノーベル医学生理学賞の授賞対象になりました
治療期間は月単位に及び、薬のお値段は数百万円ですが、現在は自治体の補助により毎月最大2万円で治療が受けられます。既にダメージを受けた肝臓はもとに戻らないし、肝細胞癌を今後発症するリスクは残ります。それでも、HCVを除去することでこれ以上の肝臓の機能の悪化は防げるので、健康のためにぜひ治療をオススメしたいです

まとめ:

さて、成人で1回だけC型肝炎ウイルス(HCV)の検査を受けましょう、というお話はいかがだったでしょうか。C型肝炎は最近治療ができるようになった病気です。検査で見つかったら助成を利用して治療を受けていただくことで、健康長寿にお役立てください!

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この記事を書いた人

卒後15〜20年の病院内科医のナカノです。資格は医師・総合内科専門医・リウマチ専門医・アレルギー専門医(内科)・博士(医学)です。現在はアメリカのワシントンDC郊外の研究所で研究者として働いてます。
暮らしに役立つ知恵や皆さんの健康に寄与する情報を発信していければと考えています。

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