糖尿病の足病変 (ADA2023)[糖尿病]

Diabetic foot

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内科医の3Dナカノが糖尿病の足病変について解説します。アメリカ糖尿病学会の年末年始恒例イベントの、ガイドライン更新時期がやってきました。内科医3Dナカノは、成人の2型糖尿病(1型糖尿病・妊娠糖尿病・小児・日本で珍しい病気に合併した糖尿病は除く)についてシリーズで取り上げますので、一緒に勉強していってください

目次

本日の結論:

  • 糖尿病の足病変は、糖尿病が原因で糖尿病患者さんの足の血流が悪くなる病気です
  • 糖尿病は痛みを感じなくなる場合があるのでご自身で気づきにくい場合があります
  • 足切断や寿命短縮の原因になるので、年1回足の評価を受けることをオススメします
糖尿病足潰瘍のリスクが高ければ
  • 屋内外を問わず、厚底の靴を履きましょう(裸足や靴下で歩かない)
  • 毎日1回足全体の皮膚と履いている靴の中を観察しましょう
  • 毎日足を優しく洗ってしっかり乾燥させましょう
  • 軟膏でしっかり保湿をしましょう
  • 足の爪は真っ直ぐ切りましょう
  • ウオノメ・タコなどは一切触らないでください
  • 陥入爪や真菌感染(水虫)は治療を受けてください
  • 異常があったら必ずすぐに専門家に相談しましょう

結論のもとになったADA推奨は次のとおりです

12.21 足潰瘍や切断の包括的評価を最低年1回実施する

12.22 皮膚・足変形・神経(10gモノフィラメント+1)・脚と足の脈拍を評価する

12.23 触覚鈍麻・以前の足潰瘍や切断の既往があれば毎回足を診る

12.24 足潰瘍・切断・シャルコー関節・血管手術・喫煙・腎臓病・神経障害(痛み・焼ける感覚・麻痺)・血行不良(足の疲労感・跛行)がなかったか確認する

12.25 初回は、下肢の脈拍・動脈再灌流・下肢挙上時の色調不良・静脈再灌流などを確認して異常があるようならABIを測定し血管精密検査を検討する

12.26 高リスク(血液透析・シャルコー関節・足潰瘍や切断の既往・末梢動脈疾患(PAD))なら、多職種のチームで対応する

12.29 高リスクなら足装具を使用する

米国糖尿病学会2023ガイドライン

言葉の解説をします

糖尿病の足病変は、

  • 糖尿病が原因で糖尿病患者さんの足の血流が悪くなる病気です
  • 糖尿病は痛みを感じなくなる場合があるのでご自身で気づきにくい場合があり、
  • 年1回足の評価を受けて頂くことをオススメします
Diabetic foot
糖尿病の足
(左)血流が悪く皮膚に穴が空いてしまっています
(右)炎症で赤みがかかっている足
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自覚症状は、

  • 歩いていたら足が痛くなって歩くのを中断する(間欠性跛行)
  • 足の疲労感がすごい
  • 足の色が右と左で違う(白かったり青みがかっていたり)
  • 足に傷ができてから治りが思わしくない

などがみられます

病院で評価してもらうとよいのは、

  • 皮膚
  • 足変形
  • 神経(10g-モノフィラメント+温痛覚か128Hzの音叉)
  • 脚と足の脈拍

などで、
異常がありそうならABI(足上腕血圧比)など追加の検査を検討します

10g-モノフィラメント・温痛覚・128Hzの音叉については神経障害の記事をご覧ください

ABI(足上腕血圧比)は、

  • あおむけ(仰臥位)で15~30分安静にした状態で、
  • 足首にマンシェットを巻いて血圧を測り、
  • 二の腕(上腕)の血圧と比を取ったものです
  • 正常だと1~1.3足首のほうが高い値になります

足首の血圧は足背動脈と後脛骨動脈で測定して、収縮期血圧が高い方を採用するのが正式のようです。ABI0.91~0.99は境界型で、0.9以下の場合は下肢動脈の異常を示唆します。逆に1.3以上は極度に動脈石灰化が進んで動脈の圧迫がうまくいかなかったことが疑われ、これも精密検査の対象になります

ABIは足の血圧と腕の血圧を比べたものです
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国際糖尿病足部会の糖尿病足病変のリスク分類は、

カテゴリーリスク特徴診察頻度
0非常に低LOPSもPADもない毎年
1LOPS・PADどちらか1つ6~12ヶ月ごと
2LOPS・PAD・足変形のうち2つ3~6ヶ月ごと
3LOPS・PADがあって足潰瘍・切断・透析1~3ヶ月ごと
LOPS:体を防御する感覚の喪失 PAD:末梢動脈疾患
体を防御する感覚の喪失(LOPS)は、
  • 10g モノフィラメントという専用のプラスチック繊維で評価します
  • モノフィラメントが90度曲がる位の強さで足先を触って、
  • 左右どちらを触ったか答えてもらうかたちで検査します
  • これがわからないと足潰瘍・足切断のリスクであるとされています
末梢動脈疾患(PAD)は、
  • 動脈硬化によって冠動脈(心臓)以外の血管が細くなったり閉塞する病気です
  • 典型的には高血圧・高脂血症・糖尿病・喫煙などの血管のリスクが高い方で、
  • 下肢の症状(歩くと痛い・足の色が悪い)を契機に疑われ、
  • ABIなどの検査により診断されます

足病変の推奨は、


医療側がチェックするべき項目が中心で、患者さんの興味を引く話題が少ないようでした。ここで患者さんが医療側から伝えられるべき(教育を受けるべき)とされている項目を見ていきましょう

国際糖尿病足部会の2019年推奨(抜粋)によれば、

糖尿病足潰瘍のリスクが高ければ
  • 足潰瘍とその予後(足切断や寿命の短縮につながること)をお伝えする
  • 屋内外を問わず、厚底の靴を履くように指導する(裸足や靴下で歩かない)
  • 毎日1回足全体の皮膚と履いている靴の中を観察する
  • 毎日足を優しく洗ってしっかり乾燥させる(特に足趾の間)
  • 軟膏でしっかり保湿をする
  • 足の爪は真っ直ぐ切る
  • ウオノメ・タコなどは一切触らない
  • 陥入爪や真菌感染(水虫)は治療をする
  • 異常があったら必ずすぐに専門家に相談する

日本で家の中で靴を履く人はあまりいないはずなので新鮮ですが、足に傷をつけないという目的にはかなっているように思います。今まで「両足の毎晩のチェック」に関しては患者さんにお話していたのですが、靴の中身もチェックっていうのは盲点でした。3Dナカノも患者さんにオススメしてみたいと思います

足が湿っていると真菌感染症のリスクになるので、しっかり乾燥させるというのは妥当な指導でしょう。よく足の爪の角を落としてしまって陥入爪(巻き爪)になってしまっている人を見かけます。足の爪の角にゴミが溜まりやすくて不快なのはわかるのですが、深追いするのは3Dナカノもオススメしません

まとめ:

今日は糖尿病の足の推奨を取り上げました。個人的には2019年の国際糖尿病足部会の推奨がきめ細やかで良いと思いました。糖尿病と診断されたら定期的に足の診察も受けてください。受診是非コンテンツを健康長寿にお役立てください!

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この記事を書いた人

卒後15〜20年の病院内科医のナカノです。資格は医師・総合内科専門医・リウマチ専門医・アレルギー専門医(内科)・博士(医学)です。現在はアメリカのワシントンDC郊外の研究所で研究者として働いてます。
暮らしに役立つ知恵や皆さんの健康に寄与する情報を発信していければと考えています。

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