フローサイトメトリーの実験計画・予備実験の注意点 [FACS]

本日はフローサイトメトリーの本実験の前にするべき準備についてお話します。原則、臨床検査技師の方・血液内科医師・医生物学的な研究をする研究者を、想定聴衆として書きます。皆様に役に立つ内容ではないものの、日本語での情報は不十分だと感じてます。今後の日本発のサイトメトリーの臨床・研究のスタンダードが上がることを祈念しながら、医学者ナカノが解説していきます


目次

本日の結論:

  • サイトメーターのフィルターの確認は、一番最初にするべきです
  • 一緒に使える蛍光色素の組み合わせをすでに使っているひとに聞くと良いです
  • 次にそれぞれの蛍光色素の特性の把握して、パネルを設計します
  • 予備実験前に導入したほうが良い物品はこの時点で購入をオススメします
  • 物品が手に入ったら未染色細胞でボルテージの決定をします
  • 抗体が届いたら本実験前にタイトレーションをオススメします

言葉の解説をします

サイトメーターのフィルターの確認は、

  • 一番最初にするべきことです
  • 蛍光色素のオススメの組み合わせがこれで決まるからです

バンドパス(BP)フィルターとロングパス(LP)フィルターで構成されているものが多いと思いますが、まずこの波長を把握するのが最初にするべき事です。この構成の設計方針によって、大まかに使うべき蛍光色素の組み合わせが規定されています。フィルターの種類に関して詳しくは以下の記事をご覧ください

蛍光色素の組み合わせに関しては、すでにその機器を使用しているひとのものを参考にするのもよいかもしれません
3Dナカノがこれまで身の回りにあった機器でオススメされていた、蛍光色素の組み合わせをまとめた記事をご紹介します

蛍光色素の特性の把握

  • 機器にもよりますが、タンデム色素・ポリマー色素を上手に組み込むことで、
  • 光のスペクトラムを一番上手にいかせる可能性が高まります

蛍光色素の特徴に関して詳しくは以下の記事をご覧ください

使える蛍光色素と染色パネルの検討

  • 自分が検出したい(細胞表面)抗原と使える蛍光色素がわかったら、
  • 抗原の発現の多いもの少ないものにわけて、
  • 発現の多いものは暗い蛍光色素、少ないものは明るい蛍光色素を割り当てます

パネル設計に関して詳しくは以下の記事をご覧ください

予備実験前に導入したほうが良いものは、

  • FACS tube
  • FACS buffer
  • Fc Blocking Reagent
  • Brilliant Stain Buffer Plus
  • Compensation Beads
  • FACS tube rack

などです

FACS tubeには、

ポリスチレンポリプロピレンの2種類があって、サイトメーター毎に使用できるものが異なっているので確認が必要です。それぞれの素材の特性に関して詳しくは以下の記事をご覧ください

FACS bufferは、

PBS(リン酸緩衝バッファー)にBSA(ウシ血清アルブミン)や、キレート剤のEDTAなどを混ぜたものを使っている場合が多いと思います。3Dナカノは以下のものを使っていますが、自作しても良いと思います

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Fc Blocking Reagentは、

  • 抗体がFc部分で結合してしまうのを防ぐべく、
  • 予めFcレセプターを非特異的なヒト抗体でブロックする操作です
  • ヒト細胞をブロックするならヒト抗体というように動物種を合わせる必要があります
結合の特異性と不特異的結合
Fc Receptorへの結合は特異的結合ですが避けたい反応です

3DナカノはBiolegendの以下の製品を使っていますが、なんでもよいと思います

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Brilliant Stain Buffer Plusは、

ポリマー色素を複数使用する場合に必要になります
予備実験では通常不要ですが、FMOなど重染色を試す場合には必要な場合があります
Brilliant Stain Buffer に関して詳しくは以下の記事をご覧ください

Compensation Beadsは、

  • 細胞に発現量が少ない抗原を標識する場合、
  • 実験に使える細胞量が限られている場合に威力を発揮します

Compensation Beadsに関して詳しくは以下の記事をご覧ください

FACS tube rackは、

  • Nalgeneの13mmの規格のものがマルチチャンネルピペットとの相性が良いです
  • 12チャンネルのP1000を一つ飛ばしでチップを装着すると、Wash操作などが速やかにできます
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サイトメーターのボルテージの決定は、

  • 未染色(Unstained)細胞を使って行うので蛍光抗体が届く前に実施可能です

ボルテージのタイトレーションに関して詳しくは以下の記事をご覧ください

抗体が届いたら、

  • 蛍光抗体のタイトレーションを行うことでシグナルとノイズが最大限分離できます
  • 蛍光抗体毎に5点程度ずつ行えば十分な場合が多く、
  • コストとパフォーマンスの両方を改善できるお得な予備実験です

抗体のタイトレーションに関して詳しくは以下の記事をご覧ください

他で本実験前に検討してもよいのは、

  • 蛍光抗体のCompensation controlを細胞ビーズのどちらを使うか考える必要があります
  • FMO controlの要否は抗原と蛍光色素によって毎回準備した方が良い状況もありえます
  • 固定して翌日に測定した場合に結果が変わるかどうかの検討すると、検体準備と測定の日が分けられます

ですが、これらは初回の本実験のときに計画しても十分かもしれません
FMO controlに関して詳しくは以下の記事をご覧ください

まとめ:

本日の実験計画・予備実験のお話はいかがだったでしょうか。3Dナカノも実験を始めてから途中で知って愕然とした知識が目白押しなので、これを読んだ皆さんが同じ轍を踏まないようにお祈りするばかりです。読んでも不明な点は質問をお寄せください。自信を持って正しい結果を出せるように頑張っていきましょう!

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この記事を書いた人

卒後15〜20年の病院内科医のナカノです。資格は医師・総合内科専門医・リウマチ専門医・アレルギー専門医(内科)・博士(医学)です。現在はアメリカのワシントンDC郊外の研究所で研究者として働いてます。
暮らしに役立つ知恵や皆さんの健康に寄与する情報を発信していければと考えています。

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